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学校怪談は眠らない  作者: カンキリ
たったひとつの攻めたやりかた

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20/31

異世界より

 松島先生に適当な調査報告――、何も有りませんでした、これで私達も気が済みましたありがとうございました(棒読)的な――、をして、資料室の鍵を返した後、黒川さんの提案で、私達は学校近くにあるショッピングモールのフードコートに場所を移した。

 松島先生に本当の事を言わなかったのは、黒川さんがそれを望まなかった事と、なにより、見た物が凄すぎて、なんと報告すれば良いかがわからなかったから。

 そして、もし、事実を伝えることが出来たとしても、信じてもらえないだろうから――、だった。

 だって、実際この目で見た私自身すら、これを事実として理解することを拒む自分がいるのだから。

 晩ご飯に近い時間のフードコートはガラガラで、人気が無い状態だ。

 やはり、晩ご飯はみんなお家で食べようと考えるのだろう。

 私達は思い思いにショップから飲み物を買って、四人がけの席に陣取っていた。

 だれも、何も言い出さない。

 と、言うか、私は何を言えばいいか解らない。

 目の前で起こって、実際に見た物が、何なのかを理解出来なかったから。

 理解出来ないから、言葉を探しようがない。

 言葉が探せないから、言葉が出てこなかった。

「私、こっちの人間じゃないのよ」

 開口一番、黒川さんがとんでもないことを言い出す。

 三沢さんがストローで飲んでいたアイスティを危うく吹き出しそうになってる。

「命拾いしましたね黒川さん――。吹き出していたら、アイスティを弁償してもらうところでしたよ」

 三沢さんがそう言って口元をハンカチで拭った。

「いや、冗談じゃなくて」

 黒川さんがホットコーヒーのコップに口を付けながら話し出す。

「ここじゃない世界――。『異世界』って言うのかな?どうやらそこから来て、こっちの世界の黒川――黒川千歳くろかわ ちとせと入れ替わってるみたいなんだ」

 あんまりとんでもないカミングアウトだったので、「へー、黒川さんって千歳って名前なんだあ」くらいしか私の頭では情報が処理できない。

「さっきみたいな事が出来るのは、つまり、私のいた世界が『そういう世界』だったってこと」

 えーと、続くんですか?この話。

 戻ってこい私の理解力。

 何処かに落としてきてしまったみたいです。

 だれか、拾って届けて下さい。

「入れ替わってるとして、どうやって?一体何をしたんですか?」

 三沢先輩がしゃべってる(小並感)

「解らない――。少なくても、私は何もしていない。半年ぐらい前に、気が付いたら入れ替わっていた。だから、ひょっとしたら、こっちの世界の私が、何かやらかしたのかも」

 二人が難しい話をしている間、私はアイスコーヒーのストローに息を吹き込んで、ぼこぼこさせ、意識を整えていた。

「帰る手段を色々探ってみたんだが独りでは埒が明かない。仲間が欲しいと思っていた時にオカルト同好会の事を知った」

 黒川さんの言葉に、前に彼女が言っていた『調べたいことがあって、仲間がいてくれればいいかな』の意味が解った気がする。

「多少おかしな事やってしまっても、オカルト同好会だからってごまかせそうだし」

 黒川さんはそう言って笑った。

「それじゃ早速、異世界の事を探る手伝いをしてもらおうとしてたら、三沢が学校の七不思議をテーマにしたいって言い出して、予定が狂った。部活に昇格して顧問が就いてしまったのも予定外。何かと学校側の制約が付いてしまうだろうしね」

 黒川さんは、そこまで言ってコーヒーを一口飲み小さくため息を付いた。

「変に異世界調査主張して、確執つくったり顧問に目を付けられたりすると後々やりにくくなると思ったんで、さっさと七不思議を終わらせて、次にしようと思ったんだ」

 信じるしかない。

 信じざるを得ない。

 だけど、あれ?そうだ、私も聞きたいことがある。

「黒川さん!」

 何か言いかけようとしていた黒川さんが私を見た。

「聞きたいことがあります!」

 いや、むしろ聞きたい事しかなかったのだが――。

「何?」

 そう言って静かに私を見つめる黒川さんの、涼しい視線に若干の恐怖を感じつつ質問する。

「資料室にいた『あれ』は何ですか?そして私は何を見せられたのですか?」

 申し訳ないが、黒川さんの身の上話より、今は目の前で起こった事を説明してもらいたかった。

 そして、現実である事を納得したかった。

 何の説明もなければあんな凄い物、私にとっては、映画を見ている様な物だった。

 理解も了解も、承知も出来ない。

 納得出来ない。

「そっか」

 黒川さんが手櫛で前髪を後ろに流しつつ言った。

「そうだよね、そっちから話そうか――」

 私は、黒川さんの言葉に頷いた。

「七不思議探しが禁止になったから、それじゃあ早速私の手伝いをやってもらおうと思った。七不思議調査の時にやった、知ってる話の投書調査。あれ、なかなかいい方法だと思ったんで、あれの『異世界調査』版で情報を集めようと考えていたんだけど――」

「いえ、黒川さん。そうじゃ無くて、もっと率直な話です。率直に『あれ』はなんですか?なんだったのかを聞いてます」

 黒川さんが見当違いの話を始めたように思って、慌てて話の腰を折る。

「うん、うん。解ってるよ。どうせ後で話さなくちゃいけないことだから、今、時系列立てて話してるからね」

 黒川さんが静かに、子供をたしなめるように言った

 三沢さんと目を合わせると、彼女は小さく頷く。

「それじゃ、続けるね――。まあ、部活っぽく始めようとしたわけ。でもね、私も早く元の世界に帰りたいじゃない?だから、少しばかり手を加えることにしたよ。それが――私が入れ替わっているって事を信じてもらう事。その方が話が早いし、やりやすくなると思った。では、どうすれば信じてもらえる?そこで、思いつきました。杉山さんから聞いたヒトノモリと言う怪異。呪いの話。その時にはひょっとしたらと思っていたんだけど、松島先生の話を聞いて、まず間違い無く資料室に何か居るって思った。材料はそこにある。だからそいつを呼び出してみた。信じてもらうには実際見せるのが手っ取り早いってね」

 実際、信じるしかなくなってしまったわけだけど。

「さあ、おまたせ。あそこにいた物の正体は――」

 私は思わず息を飲んだ。

 黒川さんが悪い顔で笑う。

「白石正樹だよ」

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