ep17 八傑衆アズラ
「ふ、復活した・・・」思わずレックスが呟く。
「どうした?来ないならこっちから行くぞ。」
そう言うとアズラは棍棒を拾い上げる。
ベイルは少し考え、レックスに言った。
「レックス君、光魔法は使えるな?」
「あ!・・・やってみます。」
普通に考えれると、死なないと言う事は不死である可能性が高い。ならば光属性が有効である。
アズラがレックス達に向かっていこうとした瞬間、後ろから別の兵士が腹に剣を突き刺す。
レックス達が戦っている間に他の魔物は倒し終えており、ここにいる魔王軍はアズラ一人になっていた。
アズラは「ウッ」と声を上げたが、そのまま尻尾を振り回し、兵士を吹っ飛ばす。
「いいねぇ、何人で戦う?あんたら騎士道精神とやらには感銘を受けるぜ。」
「お前たちは手を出すな。私とレックスでやる。」
アズラの挑発に乗ったわけではなく、解決策が見いだせてない以上はこちらの被害を増やすわけにはいかなかった。
「2対1でも正々堂々は言わないけどねぇ。」
更に挑発するアズラにレックスが言い返す。
「僕たちの使命は魔王軍を倒し、世界を救う事だ!そんな綺麗事に何の意味ない!」
「おお、怖い。まぁ俺は何人相手でも構いやしないさ。」
突進してくるアズラを二人は左右に跳んで躱す。
レックスは躱しながら、白い光球を放ち、アズラの背中に直撃した。
焼けるような音がしてアズラが呻き声を上げる。
「うおぉ!痛ぇ!光魔法ってのは効くねぇ。」
アズラがわざとらしく身体を揺する。
(効いてるのか?それとも不死ではないのか?)
ベイルは再び死角から切りつける。足に大きな傷が出来た。
「レックス!傷口を狙え!」
レックスは足に目掛けて突っ込む。
「そんな大声で作戦を言うもんじゃねぇよ。」
そう言いながらアズラが棍棒で足をガードしながら尻尾で薙ぎ払う。
足を庇うことを予期していたレックスは尻尾を跳んで躱し、棍棒を持つ腕を切りつけ、続けざまにその傷口に光魔法を当てた。
「ぐはぁ!!」叫びながらアズラがのたうち回り、やがて動かなくなった。
今度は液状化しない。終わったかと確認しにレックスが近づいた瞬間、アズラが棍棒でレックスの腹を突いた。
「うっ!」と痛みに声を上げたレックスをそのまま薙ぎ払うように殴り跳ばした。
「レックス!!」倒れたレックスにフィーナが駆け寄る。
「本当に痛ぇんだよ、その魔法。魔族に光魔法が効くってのは本当だったんだな。」
アズラは立ち上がるとベイルの方を向く。
「あんたらの考えは分かるが、残念ながら俺は不死じゃねぇよ。さて、あんたらが死ぬまでに俺を何回殺せるかねぇ。」
それから暫くの間、フィーナが回復しているレックスの代わりにヴィクトールとベイルの二人がアズラと戦った。スピードは二人の方が上である為、被弾は少なかったが、長期戦になるにつれ体力が徐々に奪われていき、段々と被弾も増えていく。一方アズラは体力が減ってきては自身に止めを刺し、復活を繰り返すことでピンピンしている。
「こんな短時間で5回も死んだのは堕久しぶりだ、やっぱり強ぇんだな。あんたら。」
息を切らしながらヴィクトールがベイルに言う。
「団長、このままではキリがありません。」
「あぁ、最悪の場合を考えて、兵たちを撤退させた方が良いかもしれん。」
「はい、ただその前にひとつ提案が。」
「提案?」
「ファーランが魔王軍に攻められた時に破壊され、脆くなった城壁があそこにあります。私が兵を撤退させる振りをしてあの城壁の裏に待機させます。」
「誘導すれば良いのか?」
「はい、奴が壁の前で液状化した時に全員で壁を倒して下敷きにすれば、奴とて復活は難しいかと。」
「分かった、やってみよう。」
「僕も手伝います。」背後からレックスが現れる。
「もう大丈夫なのか?」
「はい、何とか。」
「ではレックスさんもお願いします。」
そう言ってヴィクトールが周りの兵たちを引き揚げさせる。
アズラは追撃を掛けず、兵たちが撤退していくの見ていた。
「作戦会議かと思ったら撤退か。まぁいいさ、自分とこの大将が痛ぶられるのは見たくねぇだろうからな。」
レックスに渡されたポーションを飲んだベイルは瓶を投げ捨てた。
「そろそろ終わらせよう。」
「お、いいねぇ。こっちも飽きてきた所だ。」
二人は攻撃をする振りをしながら反撃を躱し、壁の方へと誘導していく。
「終わらせるとか言って避けてばっかりじゃねぇか。」
怒ったアズラが棍棒を思い切り地面に叩き付ける。地面に穴が空き、大きく震動した事でベイルが体勢を崩し、アズラがすかさず尻尾で追撃し、ベイルが壁に激突する。
「ぐはぁ!」と声を上げ、ベイルは膝をついた。
「さぁて、追い詰められたな。」
レックスが隙を作ろうと切り掛かったが、アズラは敢えて攻撃を受け、止まったレックスを棍棒で殴り飛ばした。
アズラは両手で棍棒を持ち、ベイルに振り返る。
ベイルは目を閉じて屈み、腰の位置で剣を構えて抜刀の様な体勢を取った。
アズラが棍棒を振り上げた瞬間。ベイルが目を開いたと同時に身体に風を纏う。
一瞬の事だった。閃光と見紛う速さでベイルが切り抜け、アズラの身体は上半身と下半身に別れて、その場に倒れた。
レックスは唖然とした。噂に聞いていたベイルの剣技「グロウライン」
レックスの目では太刀筋を捉える事は出来ず、正に一筋の輝く線に見えた。
ハッと気付いたレックスは「今だっ!」と叫び、技を撃ち終え片膝を着いているベイルを抱えて距離を取った。
液状化した2つの身体が近づいていく時、兵たちの叫び声とともに壁が倒れてアズラだった物を下敷きにした。
歓喜の声が溢れるなか、ヴィクトールとフィーナが駆け寄ってくる。
「団長、大丈夫ですか。」
「ああ、だがあのままにしておく訳にはいかない。何か考えなくては・・・」
「勇者様!今、回復を。」
「ありがとう、フィーナ。でもベイルさん先に回復してあげて。」
「はいっ!」とフィーナが手を翳し、緑色の光がベイルを包む。
その時、後ろがざわつきだした。
「おい、あれ・・・」一人の兵士が指を指すと倒れた壁の一部がひび割れ出す。
「まさか・・・」
ドガッ!と音ともに棍棒が突きだしアズラが姿を現す。
そこにはさっきアズラが地面を叩いた時の穴があった。
「しまった!あの穴の中で復活したのか!」
「良かったな。まだ戦いを楽しめるぜぇ。」
その時、一瞬だけアズラが表情を曇らせた。
周りの兵に危害が及ぶ前にヴィクトールが走り出す。アズラはその一刀を棍棒で防ぎ、後ろに跳んで距離を取った。
「おっと、危ねぇ。」
レックスも追撃を掛けるが、こちらも大きく躱す。
「おいおい、そう慌てるなよ。」
余裕ぶって軽口を叩くが、明らかに動揺が見られた。
「何か変ですね。」とレックス。
「奴の能力なら相打ちでも相手に攻撃を与えた方がいいはずだが、明らかに被弾を避けてるようですね。」
「ヴィクトールさん。よく分かりませんが、今ならいけるかもしれません。」
「畳み掛けましょう。」
そうして二人は連携しながら連撃を仕掛けていく。
アズラは身体が大きく、動きが遅いため、二人の攻撃を避けるので精一杯だった。
アズラは焦っていた。心臓が妙な脈動を打っている。
(兄者、一体どうしたって言うんだ・・・)




