ep0 呪われた聖剣
立ち込めた暗雲から稲光が走る。大陸北部の森に囲まれた魔王城。
禍々しい造形の城の玉座の間、荘厳な装飾が無残に崩れ去ったその場所に、魔王と戦士達がいる。
「よもや俺が人間如きにここまで手こずるとはな。しかし、それもここまでのようだ。」
魔法使いとアーチャーは既に息絶えている。武道家は片膝を付き、僧侶は杖で辛うじて立っている。
騎士だけが戦闘態勢を取っているが満身創痍であることは誰の目から見ても明らかであった。
「たとえ命に替えても、貴様だけは倒す。」騎士が肩で息をしながら答えた。
魔王は鼻で笑う。「そんな状態で俺を倒すと言うのか?」
「・・・貴様だってそこまで余裕は無いはずだ。」
「確かにな・・・」魔王は自分の身体を見る。戦士達と違い、普通に立ってはいるが、その身体は傷だらけである。
「だが。」そう言うと魔王は黒い水晶を取り出す。
「それはっ!」騎士が目を見開く。
「オーブだ。それが何を意味するか分かるだろう?」
次の瞬間、騎士は飛び込み切り掛かるが、魔王の手から放たれた衝撃波に引き飛ばされ、壁に激突する。
「ぐはぁっ!」
「フフッ・・・アレンとか言ったな、面白い男だ。部下にしてやりたいほどにな。」
「貴様の部下になるくらいなら死んだ方がマシだ。」
「まぁ、そう言うだろうな。心配するな、お望みどおり殺してやる。」
オーブが砕け、禍々しい黒い光が現れた。魔王が手を翳すと見る見る大きくなり、巨大な球体となった。
「騎士アレン、その名は俺の記憶に刻んでやる・・・さらばだ。」
放たれた球体が凄まじい速さでアレンに飛んでいく。
アレンが咄嗟に剣で防ごうとしたその時、刀身が輝きを放つ。
次の瞬間、黒い球体は剣に吸収され、アレンの身体が金色に輝く。
「この力は・・・」
「ま、まさかその剣、エプリアの加護が・・・」
強大な魔力をその身に纏ったアレンは剣を魔王に向ける。
「魔王ヤルグ、形勢逆転だ。この一撃で終わらせる。」
アレンが飛び込むとヤルグは再び衝撃波を放つが、一切怯む事ない。
そのまま剣を胸に突き刺した。
ヤルグは「ぐはっ!」と声を漏らし、血を吐き出した。
追撃を防ごうと渾身の力でに爪を振るが、アレンは剣を放し後ろに跳んで躱した。
ヤルグは片膝を付いた。
「まさか、この俺が・・・」ヤルグは胸に刺さったにに手を掛ける。
「このまま・・・このまま終わらせてたまるか・・・」
ヤルグはアレンを睨みつけ、手に力をいれると剣に黒い靄がかかる。
「貴様、何をっ!」
「覚えていろ・・・いつか、いつか必ず・・・」
そうして魔王は倒れ、世界に平和が訪れた。
禍々しい呪いの掛けられた一振りの聖剣を残し・・・