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無事帰宅

 さいわい、気配はわたしたちの馬車から一定の間隔が開いている。というよりか、彼らはわざと感覚を開けている。ということは、いますぐに襲ってくる気ははないのかもしれない。しかし、いまのわたしの感覚は、あまり当てにできない。


 警戒は怠れない。感覚を研ぎ澄まし、五感を集中し続ける。


 だからこそ、眠れない。というよりか、自分自身のダメっぷりへの失望感、それから口惜しさで眠れないといった方がいいだろう。


 とはいえ、自分自身のダメっぷりにばかり気をとられているわけにはいかない。


 ありがたいことに、国都までの道中集中力が途切れることはなかった。


 往路とは違い、あっという間に国都の大門をくぐった気がする。


(どういうこと? 連中、どうして襲ってこなかったの?)


 襲われなかったのはさいわいだったけれど、それはそれで不安になる。疑問がわく。


(もしかして、この気配も気のせいなの?)


 つぎは、自分の感覚を疑わざるをえない。


 しかし、たしかに気配を感じる。その気配は絶えることがない。わたしの集中力同様に。


 結局、馬車は何事もなく無事にニューランズ伯爵家の門をくぐった。



 今夜は泊ることにした。


 ニューランズ伯爵家に、である。


 気配はまだ感じる。さすがに伯爵家の敷地内に、ではない。しかし、そう遠くないところに感じる。今夜は、カイルも大佐も帰ってこない。


 だから泊まらせてもらうことにした。


 このまま自分の屋敷に戻り、もしもエレノアとニックになにかあれば、絶対に後悔する。確実に自分を責めることになる。


 なにより、最愛の妻子が危険にさらされれば、カイルが傷つく。彼が悲しむ。彼自身も自分を責めることになる。


「シヅ。どうせ旦那様たちは帰ってこないし、お泊りしない? 明日の朝、ゆっくりして帰ればいいわ。ニックも目覚めたらおおよろこびするはずよ」


 エレノアは、わたしの察知している気配のことなど知る由もない。だけど、そんなふうに誘ってくれた。それが決定打だった。


 快く彼女の誘いに応じた。


 

 ニューランズ伯爵家の使用人たちは、ふつうの人たちのはず。ふつうというのは、わたしたちみたいなのではなく、ほんものの使用人という意味である。


 この夜、ニューランズ伯爵家に男性はひとりもいない。


 ニューランズ伯爵家の執事は、わが家やブラックストン公爵家同様住み込みである。しかし、今夜にかぎって実家で祝い事があるとかで泊まりがけで帰省していた。そして、この家の料理人はレディである。


 というわけで、この夜はメイドと料理人、それからわたしたちでレディばかりなのだ。


 訂正。唯一の男性がいた。ニックである。




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