推しが可愛すぎて尊すぎる
「おおきなお兄さんやお姉さんがいっぱいいるわね」
手をつないでいるニックを見おろすと、彼の天使の笑顔が目に突き刺さった。
「ズキュン」
もう何十度めかに心を射抜かれた。
「シヅ。わたし。ニックがもうすこしおおきくなったら慈善活動に連れて行こうかと考えているの。わたしたちが活動している間、子どもたちが一緒に遊んでくれるでしょうから。みんな、面倒見のいい子ばかりだし、わたしより慣れているから任せて安心できるでしょう?」
エレノアが言った。
彼女は、料理やスイーツ作りや手先仕事は残念だけれど、伯爵家で生まれ育ったわりにはだれにたいしても分け隔てなく接する。奢ったところや傲慢さはまったくなく、それどころかだれにたいしてもやさしく親切で尊敬の念をもって接している。
そんな彼女がすごいと思う。
慈善活動で接する子どもたちは、兄弟姉妹だけでなく、周囲の子どもたちの面倒をよく見る。そうせざるを得ない環境だからである。だから、どの子も子守りはお手のもの。それこそ、わたしなどよりよほど上手にちいさい子の面倒をみている。しかも、彼らのほとんどが責任感が強い。
エレノアの言う通り、ニックを子どもたちに任せて安心だ。
「でも、まだニックはムリよね。ほら、エレンとドナルドのことがあるでしょう?」
はしゃぎまわる子どもたちを見るエレノアは、ほんとうにやさしい目をしている。
(もしかして、もうそろそろニックに弟か妹ができるのかしら? それとも、つくろうとしているのかしら?)
勝手な想像を巡らせ、その想像に胸が「キュン」と痛み、頭に「ガン」と衝撃が走った。
「お母様、ぼくも慈善活動に行きたいです」
ニックの訴えでハッとわれに返った。
わたしの天使は、キラキラする瞳で走りまわる子どもたちを見ている。それから彼は、その瞳で母親を見上げた。
「エレノア。つぎの慈善活動のとき、ニックもいっしょに行ってみましょうよ。クラリスとわたしもいるし、彼はドナルドみたいに癇癪を起したりワガママ放題したりしないから。ニックは、いつも大人の中ですごしているんですもの。たくさんの子どもたちと遊んだり学んだりするのもいい刺激になるはずよ」
「シヅお姉様、ありがとう」
ニックのうれしそうな言葉とともに、わたしの手を握る彼の手にギュッと力がこもった。
(ああ、なんて尊いの)
その可愛さに鼻血が出そうになった。
「ニック、そうね。一度お父様に相談してみるわね」
エレノアの前向きな回答に、ニックの笑顔はさらに尊くなった。
「じゃあ、みんなも誘って乗馬をしましょうか」
そう提案し、さっそく子どもたちに声をかけて乗馬を楽しんだ。




