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ブラックストン公爵家所有の牧場へ行こう

 カーティスとのデートを控えたある日、エレノアとニックと三人でブラックストン公爵家の牧場に出かけた。乗馬をする為である。


『シヅ、ニックが乗馬をしたがっているの。あなたといっしょに乗りたいって。はじめてだわ。彼がワガママを言うのは』


 エレノアは、そう言って溜息をついた。とはいえ、彼女は言葉や溜息ほど困っているわけでも失望しているわけでもなさそうだ。


 ニックがいつもワガママ放題しているのならいざ知らず、はじめてのワガママ。それも可愛く思えるのだろう。


 それは、わたしも同じである。


 天使ニックがわたしと馬に乗りたい、とワガママを言っている。


 うれしいはずがない。推しの彼のワガママをきかないわけはない。


 というわけで、デニスとクラリスに相談したわけである。


 ふたりは、即座に許可してくれた。クラリスも行きたがった。しかし、彼女はちょうどこの日は王妃に会うために王宮に出向かねばならない。マクレイ国の三大公爵家の三人の公爵夫人たちは、定期的に王妃にご機嫌伺いし、お茶を楽しまなければならないという。


 クラリスとは「次回はいっしょに」、ということになった。それどころか、つぎに牧場にはブラックストン公爵家とニューランズ伯爵家とマクファーレン家と三家で遊びに行くことになった。


 ブラックストン公爵家の牧場の近くには湖や森がある。そこでは釣りや狩りだけでなく、キノコやベリー摘みができるらしい。


『一日では時間が足りないから、泊りがけで行きましょう』


 具体的にそこまで話が進んだ。


 デニスもクラリスもうれしそうだった。


 エレノアやわたしはともかく、彼らにとってニックは孫みたいな存在に違いない。


 とはいえ、わたしも楽しみである。


 乗馬だけでなく、ひさしぶりに狩りや釣りができる。それから、キノコやベリー摘みまで。


「血みどろの森」のときには、それらは食料を得るために行っていた。それから、体を動かすためにも。さらには、気を紛らわせるためにも行っていた。もしかすると、それが一番の理由だったのかもしれない。とはいえ、どのようなことでもひとりでするのは虚しかった。無機質だった。


 あの頃は、何をやっても虚しくて無機質でなにより寂しかった。


 しかし、いまは違う。


 きっと楽しいはず。いや、楽しくないはずがない。


 みんながいっしょだから。


 いいや。カイルが、死んだはずの夫ベンがいっしょだから。


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