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わたしって同性扱いされてる?

 カーティスは、今頃はデートに向けて工作にいそしんでいるだろう。もっとも、どんな工作かはわからないけれど。


 大佐曰く、彼は王宮にいるときには結構忙しいらしい。というのも、このマクレイ国の国王の体調が思わしくなく、国王がすべきはずの国務、とくに承認や会議への出席など、そのほとんどをカーティスが行っているらしい。だから、彼は夜も遅くまでがんばっていることがすくなくないという。そういうわけで、彼の体調を心配しているのだとか。


 カーティスは工作と表現していたけれど、実際は山積みの仕事を片付けなければならないのだろう。


 それなのに、なにもわたしなんかとおしのびで食事や飲みに行くことなんてないのに。


 そう思わざるをえない。


 でもまぁ、彼も気晴らしが必要なのだろう。その相手がたまたまわたしなだけ。


(そうよ。カーティスにとっては、わたしなら食べ物で釣れば簡単にひっかかるから、誘いやすかったのよ)


 カーティスといっしょに遊んでいたカイルは、いまはれっきとした片腕である。しかもめちゃくちゃ真面目だ。そんなクソ真面目なカイルが、カーティスの夜のおしのびを許すはずがない。ましてやいっしょに遊ぶだなんて。カーティスにすれば、カイルにその話を持ちかけても面倒な事態になるので倦厭したいところだろう。では、大佐は? 大佐と遊んでも面白くないはず。だって、実際大佐はちっとも面白くない。大佐ほど面白みのない男はめずらしい。そう思っているのは、わたしだけかもしれない。もしかすると、大佐が面白くないのはわたしの前だけかもしれない。たとうそうだとしても、他の人たちにたいしてユーモア抜群でいっしょにいてめちゃくちゃ楽しくなる、とは考えにくい。では、デニスは? デニスならいっしょにいて楽しいし、カイルほど堅苦しくない。だけど、年長者だと気を遣うだろう。では、男性でなくレディは? 論外である。たとえカーティスに正妃がいようと側妃がいようと、あるいはいまのフリーの状態であっても、どんなレディでも騒ぎのもとになる。


 だったら、やはりわたししかいない。どうでもいいわたしなら、好きなように扱える。しかも、わたしならレディとしてではなく男どうしみたいな付き合いができる。


(わたしって最適任者だわ)


 という結論にいたった。


 そして、当日の夜はシャツにズボンという恰好で行くことにした。


 黒色の短髪は、それだけで見た目は男になる。つまり、カーティスとわたしは男どうしの付き合いになる。


 実際、シャツにズボン姿で男性を装ったことはすくなくない。ありがたいことに、いや、ありがたくはないけれど、わたしの体格も男性っぽい。というか、レディとして本来出ていなければならないところが出ていないのである。胸もお尻もまっ平らで筋肉質。そこらにいる軟弱な男性よりよほど男性らしい体格なのだ。


 そこまで考え、ハッとした。


(もしかして、わたしってばカーティスとの食事をけっこう楽しみにしているってこと?)


 そのことに気がついたのだ。


 いや、それは違う。


 わたしが楽しみにしているのは、カーティスとの食事ではない。それよりも、これからのことを話すことを楽しみにしているに違いない。




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