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デートのお誘い?

「シヅ、ほんとうはもっとはやくきみに会いたかった。しかし、急遽前線に行かねばならなかったから今日になってしまったわけだ」

「わざわざお気遣いを痛み入ります」


 ちっとも痛み入っていない。


 そろそろ社交辞令も面倒くさくなってきた。


「それで? 前線に動きでもあったのですか?」


 本来なら尋ねるべきではない。が、なんとなく尋ねてみたくなった。


「動きがありそうだったが、結局くすぶっているだけだ」

「木の実を火に投じたときのように、『パンッ!』とどこかでひとつ弾けるだけで動きだすかもしれませんね。あるいは、水面下で動かすようにするか」


 自分でいいながら、「その工作、わたしがやりたい」なんて思った。本気で思った。


「閣下のお話しでは、わたしが閣下の役に立つということでしたが? そろそろ話してくれてもいいのではないですか? 慈善活動をしたり誘拐犯を懲らしめるのが、わたしの本分ではありませんので。閣下も早急に終戦したがっているではないですか? わたしなら、任務さえ与えてもらえばなんだってやりますよ。もちろん、うまくこなしてみせます」


 催促してみた。


 カーティスの反応を楽しみにしつつ。


「シヅ。きみは、シチューは好きかい?」

「は? シチュー?」


 カーティスの予期せぬ問いに、眉間にシワがよったのが自分でもわかった。


「ああ。野生の大型獣の肉をじっくり煮込んだシチューだ。これがまた絶品でね。そのシチューと葡萄酒と白パンの組み合わせが最高すぎるんだ。この国都にそれを食わせてくれるところがある。きみを連れて行きたい」

「きいただけでよだれが出そう、失礼しました。いえ、すごく美味しそうですね。しかし、王子であり将軍であるあなたが行くようなところではないのではありませんか?」

「そのようなことはないさ。学校時代からカイルとよく通っていたんだ。ひさしぶりに食いたくなった。きみと食えば、さらに美味いだろう。どうだろうか? 二、三日内の夜、ふたりで行こう。二、三日あれば、王宮をこっそり抜けだして遊びに行ける工作ができるから。きみとおれとでディナーデートというわけだ。そのあと、いいパブがある。地元の麦酒とチップスが最高なんだ。そこで飲もう」


(ちょっと待って。どうして食べ物で釣ろうとするの? もしかして、彼はわたしが食いしん坊だと勘違いしているとか?)


 まぁ、たしかに食いしん坊だけど。


「ふたり? デート? いくらなんでも危険すぎます」

「おいおい、シヅ。きみは、最高のエージェントだろう? 最高の護衛ってわけだ。近衛隊やら軍の護衛より、きみに守ってもらう方がよほどいい。安心できる。彼らより、きみの方がはるかに腕がいいだろうからね」

「そ、それは……。まぁ、たしかにそうかもしれませんが。それでもやはり、マズいです」


 ふたりきりだなんて、しかもカイルもデリクも大佐もおらず、だれの目も届かないふたりきりでだなんてマズいにきまっている。


 なにかあったとき、見張られていなければ大暴れするかもしれないから。


 いいや。ぜったいに大暴れする。そのように断言できる。




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