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シヅはおじさん化している?

「シヅ、あいかわらずきみは美しいね」


 それは、カーティスの心にもないわざとらしい台詞である。彼は、ニューランス伯爵家の東屋でわたしと視線が合った瞬間そう言った。


「閣下もあいかわらず美しいですね」


 彼にそのまんま返しておいた。


「シヅ、きみはあいかわらずだね。きみはきっと、子どもの頃からさほどかわっていないんだろうな。ということは、きみだけはいまから将来もずっと変わらないのかもしれない」


(ちょっと待って。ということは、わたしは子ども? 幼児体型ってだけでなく、内面もガキみたいということなの?)


 そのように勘繰らざるをえない。


「いえ、閣下。わたしはどんどんかわっていますよ。自慢ではありませんが、どんどんおかしな具合になっている感じです」

「おかしな具合?」

「はい。外見も内面もです。あまり記憶はありませんが、昔はもっと女の子らしかった気がするのです。そうですよね。おかしな具合では、ピンときませんね。どんどんおじさん化していると表現したら、閣下もおわかりいただけるのではないですか?」

「おじさん化?」


 カーティスは、プッとふいた。それから大笑いし始めた。


 彼は、大笑いしていてもなおキラキラ感が半端ない。


 というか、どうしてふたりきりなの?


 カイルもエレノアもいるし、大佐だっていっしょに来ている。それなのに、どうしてカーティスとふたりきりなの?


 この前のバラ園でのことがある。できれば、カーティスとふたりきりになりたくない。が、その一方で彼の真意を探りたい気もする。


「そうなのです。どんどん男っぽくなっていっています。このままだと、もうすぐ立派なおじさんになるかもしれませんよ。閣下よりはるかに立派なおじさんに」

「シヅ。きみは美しいだけでなく、ユーモアのセンスも抜群だな」

「恐れ入ります」


 ちっとも恐れ入っていないけれど、この不毛な会話に飽きてきたのでいったん口を閉ざすことにした。


「今日きみと会ったのは、他でもない。礼を言いたかったからだ」

「礼? いったいなににたいしてでしょうか?」


 礼を言われるようなことをした覚えはない。


「ほら、誘拐の件だ。メルヴィル夫人と息子を救ってくれたことだ。残念ながら犯行グループを一網打尽にはできなかったが、それは警察の問題であっておれの問題ではない。とにかく、きみがふたりを救ってくれたお蔭で連中はなりを潜めた。ということは、きみはたくさんのレディや子どもたちを救ったことになる」

「ああ、あれですか。閣下は、みずから捜査に乗り出していたとか。わたしのちょっとした善意が閣下の手助けになってよかったですわ」


 あれは、カーティスのためにやったわけではない。目の前でみすみす知り合いをさらわれるのは癪だったし、弱者を利用する連中が許せなかっただけのこと。


 なにより、後腐れや罪悪感なしにストレス解消ができると思ったからである。


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