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誘拐未遂事件から二週間後

 ニューランス伯爵家でカーティスと会ったのは、ささやかなストレス解消をした、もといエレンとドナルド母子の誘拐未遂事件のあった二週間後だった。


 誘拐犯たちは、エレンとドナルドの誘拐を失敗したことに懲りたらしい。活動を自粛している。というか、すっかりなりを潜めている。残念ながら、このマクレイ国の警察も祖国ベイリアル王国のそれとレベルはかわらない。彼らは、誘拐犯たちを捕まえるどころか尻尾さえつかめないでいる。


 もしかすると、誘拐犯たちは誘拐が未遂に終わったその日に国境を越えてベイリアル王国か他の国境を接する国へ逃げたのかもしれない。そして、つぎはそこで仕事を再開したのかもしれない。あるいは、しばらくは地下に潜ってほとぼりが冷めるのを待つのかもしれない。


 彼らもバカではない。悪いこととはいえその道のプロ。プロはプロらしく、うまくやりすごすに違いない。


 というわけで、とりあえず連続誘拐犯の脅威は去った。それを阻止しようとがんばっていたカーティスは、いったん前線に戻った。彼は、王子であり将軍。そして、いまマクレイ国は戦争中。ベイリアル王国とではなく、オールドリッチ王国と。実際、ドンパチしているのである。ベイリアル王国とではなく、オールドリッチ王国と。


 カーティスは、将軍として前線で指揮を執る。当然のことといえば当然のことだけど、彼が王子のひとりであるということを考えれば、それも稀有なことだろう。


 カーティスが前線で指揮を執ることは、彼が「お飾り」的な将軍ではなく、「ほんとう」の将軍である証拠なのだ。


 そのカーティスが国都に戻ってきた。


 その翌日、彼とニューランス伯爵家で会ったのだ。


 ああ、そうそう。カーティスは、前線にはカイルはもちろんのこと表向きはわたしの夫である大佐も連れて行った。


 というわけで、この二週間はじつに自由気ままに動きまわることがきでた。とはいえ、たいした収穫はなかったけれど。残念ながら、クラリスとエレノアとの「レディ付き合い」が忙しすぎて情報収集がろくにできなかった。


 とはいえ、クラリスとエレノアとの付き合いもけっして悪くはない。むしろ楽しくて充実していた。


 ニックも連れてブラックストン公爵家の私有地のひとつである牧場にも行ってきた。国都外にあるおおきな牧場である。そこでは乗馬だけでなく、搾乳やチーズやパン作りも体験した。とくに乗馬は、わたしの得意のひとつ。ニックに手ほどきもした。ほんとうは、彼の父親であるカイルがすべきことだ。しかし、彼にはそんな暇はないだろう。なにせ彼は、カーティスの片腕なのだから。


 それはともかく、ひさしぶりに会ったカーティスは、あいかわらずキラキラ輝いていた。




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