「愛すべき天然」、それはエレノア
エレノアと付き合ううちに、彼女は外見に似合わずちょっと天然だということにイヤでも気付かされた。
彼女の名誉の為に補足すると、けっしてひどいわけではない。ほんのちょっぴり、である。
それがまた、彼女の外見とのギャップで萌えるのかもしれない。
つまり、彼女は「愛すべき天然」である。
しかし、それは死んだはずの夫ベンの好みではない。すくなくとも、わたしが把握しているかぎりでは、彼は美しすぎたり可愛すぎたり従順すぎたりやさしすぎたり気遣い抜群すぎたり、という完璧すぎるのは好みではない。それから、おっとりすぎたりマイペースすぎるのも、彼の好みの範囲外のはず。
エレノアは、そのすべてにあてはまる。
だから、ベンがエレノアを気に入ることはないはず。ましてや結婚し、子どもを作ることなど……。
もっとも、カイルならわからないけれど。カイルなら、そういうのが好みなのかもしれない。
いいや。好みだからこそ、エレノアと結婚し、ニックを授かり、三人でしあわせな家庭を築いているのだろう。
「愛すべき天然」であるエレノアは、わたしにとって友人という以上に情報源のひとつには違いない。そのはずなのだ。が、彼女はやはり天然だった。いくら遠まわし、あるいはストレートにカイルのことを尋ねても、なぜかほんとうに欲しい答えが返ってこない。
もしも彼女にうまくはぐらかされているのだとすれば? うまくあしらわれているのだとすれば?
これだけの完璧ぶりである。彼女もまた「ザ・エージェント」のメンバーのひとりに違いない。
エレノアから得たカイルの情報は、彼女とカイルはもともと親どうしの定めた婚約者どうしであったが、ふたりはそれとは関係なく幼い頃から仲がよく、成長するにつれて愛し合うようになったということ。それから、カイルが軍の学校を卒業するまでにエレノアと結婚することで、ニューランズ伯爵家の伯爵の爵位と当主の座を継いだということ。さらには、カイルとカーティスは軍の幼年学校で出会い、親友でありライバルどうしであるということ。そしていま、カイルはカーティスの片腕として大活躍しているということ。
おおよそこれらの情報を得た。もっとも、これらの情報に秘密性や重要性はないけれど。
いずれにせよ、エレノアの語るカイルの経歴は完璧である。




