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やっぱりわたしは「脳筋レディ」なのよ

「おっと時間だ。シヅ、そのことについてはまたゆっくり話そう。ふたりきりでね」

「はあ?」


 カーティスは、さっさと立ち上がった。彼は、彼につられて反射的に立ち上がったわたしの手を取ると、そこに口づけをした。


「ほんとうは、きみのその官能的な唇に口づけしたいところだがね。しかし、今日のところはやめておこう」


 わたしの唇は、他人を物理的精神的に攻撃するために鍛えている。そんな危険な唇に官能的という単語は似合わないだろう。


 もっとも死んだはずの夫ベンにたいしてだけは、官能的かつ情熱的な唇に変化するけれど。


「閣下」


 やってきたのは、その死んだはずの夫ベン、いや、カーティスの従順な片腕のカイルだった。


「そろそろ王宮に戻る時間です」


 死んだはずの夫ベン、ではなくカイルは、カーティスに告げて帰るよう促した。


 そして、彼はカーティスを連れて行ってしまった。


 わたしをいっさい見ることなく。


 カイルは、わたしに視線を向けることなく目礼だけ残してわたしの前から去って行った。



 カーティスからの謎だらけの誘いの後、たっぷり時間をとって身と心を清め、静かに穏やかに自分自身を見つめ直すことを試みた。


 もちろん、自分自身だけを見つめ直すわけではない。


 今回のこのクソッたれの任務のすべてを、客観的にみたかったのである。


 しかし、どれだけ沈着冷静になって見つめ直しても謎は謎のままだし、疑わしきは疑わしいままである。それどころか、ますます謎と疑わしいことが増えていく始末なのだ。


 自分自身の性格もあり、四度考えた時点でそれを諦めてしまった。


 そして、なるようになるという結論にいたった。


 つまりこのまま流れに身を任せていれば、すべてわかるだろう。自分の知りたいことや知りたくないことが、見えてくるだろう。


 そう割り切ることにした。


 というか、自暴自棄になった。


 大佐にたいしてどうしたか?


 もちろん、彼にも尋ねてみた。昼夜を問わずに尋ねまくった。


 が、彼はかたくなに「知らない」とか「わたしも驚いている」とか、わたしが欲する答えとは反対のことを言うだけだった。嘘だとバレバレのことをつらねるだけなのだ。


 大佐は、たしかになにかを知っている。なにかを隠している。


 そう直感した。


 いいや。うなじのザワザワ感でそれを察知した。


 まず間違いない。


 ただ、それがなにかまではやはりわからない。


 余計にモヤモヤいらいらするだけである。したがって、大佐のことも諦めた。


 とにかく、あれこれ考えても時間のムダ。


 いけすかないし認めたくはないけれど、少佐のいうとおりである。


 わたしは、「脳筋レディ」なのだ。


 割り切ってしまうと、意外にスッキリした。


 とはいえ、やはりただひとつのことが気にかかる。


 気になって仕方がないのである。



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