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戦争中ですが、それがなにか?

「閣下、かいかぶりすぎです。わたしは、ただのレディです。それどころか、前線で役に立ちそうにないからと広報部にまわされた役立たずにすぎないのです」


 当然、そう応じた。


 いまのは、完璧な模範解答だった。そのはずである。


「閣下。わたしのことよりも、先程のお話しです。マクレイ国は、ベイリアル王国以外にも戦争をしているのですか?」


 カーティスの意図を探りたい。手っ取り早く、スピーディーに。


 というわけで、話を戻した。というより、彼に思い出させようとした。


 先程のカーティスの言い方は、あきらかにベイリアル王国以外の国と戦争をしているようだった。


 一度に二国と戦争を?


 ありえない話ではない。


 ベイリアルとは、もう三年以上も実戦は行われていない。終戦協定、もしくは調停の話し合いでさえ、滞っている。両国ともに、ある意味放置している。


 このまま曖昧にやりすごそうとでもいうのか、とにかく両国ともに戦争を続けるつもりはない。ということは、最低限の部隊をベイリアル王国との国境付近に配置しておけばいい。


 いや。それどころか、先日の国境越えでは、国境警備隊の他には必要最低限の数だけの守備隊さえ見かけなかった。


 こんな状況なのだ。マクレイ国は、ベイリアル王国以外の国と戦争ができなくもない。


 もっとも、それだけ負担がかかるけれど。


 国じたいに。そして、国民たちに。


 しかし、そんなことは戦争をしたがる側の知ったことではない。


 支配者階級というものは、欲の塊である。みずからの欲を満たす為なら、どんな犠牲も厭わないのだ。


 訂正。あらゆる犠牲を強いるのだ。


 国民にたいして、多大かつ理不尽な要求を強いるのだ。


「シヅ、そちらへ行こう。座って話をした方がいいだろうから」


 カーティスの分厚くてタコだらけの手が伸びてきて、わたしの手を握った。


 彼の手を避けることはできた。あるいは、握られた瞬間に払うこともできた。


 が、どちらもしなかった。


 というよりか、しない方が無難だっただろう。


 カーティスにベンチへと導かれた。


 大人三人が腰かけられるほどのおおきさの真鍮製のベンチである。


 そこにふたり並んで座った。


(座って話をするほど長くなるわけ? というか、座らず手短にすませてほしかったわ)


 というのが本音。


「先程のきみの質問の答えは、イエスだ。その相手がどこの国か? きみがつぎにするであろう質問に先に答えておくよ。それは、オールドリッチ王国だ」


(オールドリッチ王国ですって?)


 ドキリとした。そして、わずかながら動揺した。


「そうでしたか。ですが、どうしてそのことをわたしに?」


 心の内をごまかす為、おどけたふうを装った。




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