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旦那様って変態?

「なんてことかしら? 奥様、痣だらけですわ」

「まあああああっ! 奥様、どうなさったのです?」


 カミラとナンシーは、コルセットでわたしの体を締め付ける際に手足や体の痣に気がついた。


「昨夜、夫ががんばりすぎたの」


 恥じらい感満載で囁いた。


「夫の生家であるマクファーレン公爵家には、寝台での秘技がたくさん伝わっているの。そのどれもがとてもバイオレンスでダイナミックでアクロバティックなの。昨夜、ひさしぶりにそれらを試したらこんなふうに」


 一晩中、関節技や絞め技や殴る蹴るの応酬をすれば、体中が痣だらけになるのは当たり前である。


 もちろん、おたがいに顔や手など見えるところは避けるけれども。


「ずいぶんとかわっているでしょう。わたしもビックリしたわ。夫自身、そういう性癖があるので彼自身は大興奮でヤルわけ。彼は、荒っぽいことをされるのもするのも大好きなの」

「だから旦那様も痛がられていたのですね。旦那様ってそういう方なのですね」

「なんだか、意外です」


 カミラとナンシーは、顔を見合せた。


「もちろん、それはわたしにだけよ。寝台の上限定、でね」


 心の中でほくそ笑んだ。


 大佐にたいするお茶目ないやがらせ、というかイタズラである。


(彼女たちは、これで大佐のことを変態認定するわ)


 笑いは、心の中でおさまらなかった。


 実際、声に出して笑ってしまった。


 その後、カミラとナンシーの大佐への態度が微妙になったことはいうまでもない。それどころか、執事のフィリップと料理人のサイモンもまた、大佐を見る目がかわった。カミラとナンシーが話したのだ。


 彼女たちも、任務で知り得た情報は共有しなければならないから。


 それはともかく、後日大佐に捏造話を知られてしまい大目玉をくらった。


 しかし、それまで大佐の頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいたのは面白かった。


 彼は、わが家の使用人たちの自分にたいする態度が微妙に変化したことに気がついたのだ。


 そんな彼を見、すこしは溜飲を下げることができた。




 ちょっとかわった性癖を受け継ぐ大佐とともに、ニューランズ伯爵家へと向かった。


 デリクは、はやめに迎えにきてくれた。さすがは元軍人。時間前行動は、軍人の職業病のひとつなのかもしれない。


 ニューランズ伯爵家は、控えめにいっても立派だった。


 というか、このあたりにある貴族の屋敷は、どこも立派である。そんな中にあっても、ブラックストン公爵家やニューランズ伯爵家のそれは、よりいっそう立派に見える。


 門をくぐると、わずかながら上り坂になっている馬車道を進む。左右には木々が並んでいて、前庭というよりかは森のよう。


 やっと見えてきたのが、二階建ての古風な屋敷だった。古風といっても、古めかしいボロさはない。伯爵家の歴史を感じさせる古さである。

 陽光を受けてキラキラ輝く屋敷は、改築を重ね、余念なくメンテナンスされているようにうかがえる。


 それは、外観だけではなかった。


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