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顔見世興行

 宮廷楽団は、いまはまだ控えめな曲を演奏している。


 大広間内を見渡すと、よくある宮殿のパーティー同様壁際に食べ物が並んでいて、宮殿付きの侍女たちが飲み物を運んでいる。


 デリクとクラリスの足が止まったのは、静かな曲が終ったときだった。


 屈強な護衛の男たちに囲まれた男性とレディがいて、数名の招待客たちと談笑している。


 デリクが声をかけると、彼らはいっせいにこちらを向いた。


 健康的にどうなの? ダイエットした方がいいんじゃない?


 その男性とレディは、余計なアドバイスを送りたくなるほど恰幅がいい。


 それは、まさしく飽食と怠惰の象徴である。


 その身体的特徴で、彼らが資料にあった王子のひとりとその妃であると予想した。


 わたしの予想は、デリクの紹介で資料は間違いではなかったことが知れた。


 彼らと当たり障りのない挨拶を交わす。


 こうして何名かの王子や王女に紹介された。


「さてはて、いままでのは前座みたいなものだ。まぁ、顔見世興行的なものだな。いまから紹介するのが本命だ。わたしがもっとも紹介したい人物というわけだ」


 デリクは、本気で言っているようだった。


 そうして、移動した。


 移動先は、これまでにない人だかりができている。


 その中央部にいるのが、最後の王子らしい。


 人々の間に見えるその姿は、たしかにいままでの王子とは異なる。


 見た目の美しさだけではない。オーラというか気迫というか、根本的なものがまったく異種のものである。彼だけ光り輝いているといってもいいかもしれない。


 しかし、わたしの目を惹きつけたのは、そのキラキラ王子ではなかった。


 そのキラキラ王子の側近らしい人物だった。


 先日、ブラックストン公爵家で行われたお茶会で知り合ったばかりのエレノアがいる。彼女は、今夜も美しい。エレノア自身の控えめで清楚な美しさは、彼女が着用している薄紫色のドレスがよりいっそうひきたてられている。


 デリクが集団に声をかけると、エレノアはまっさきにこちらに視線を向けた。


 そして、わたしの姿を認めると、こちらに控えめに手を振った。


 その彼女の動作が可愛らしいのはいうまでもない。





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