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だれがカッコいいって?

「おれがカッコよすぎて悪かったな」


 そのとき、彼の野性的な美貌に嫌味な笑みが浮かんだ。


「そんなこと、すこしたりとも思っていませんよ」


 速攻でやり返した。


 そう返しはしたが、彼がカッコいいということはだれもが知っている。


 自惚れ屋の彼自身が一番よくわかっているけれど。


 そして、彼はそれをひけらかすし、隠そうともしない。ついでに、謙遜することもない。


「こうしておれの前に出てきたということは、心の傷が癒えたということか? あいつのことに見切りをつけたということか?」


『あいつ』、というのが夫であることはいうまでもない。


 なにも考えず、なにも思わないようにした。


 その上で唇を「ギュギュギュッ」と引き結んだ。というか、噛みしめた。


「ったく、未練がましくまだあいつのことを待っているのか? あいつの死をまだ認めていないのか? 信じていないのか?」


 少佐は、子どもみたいに土塊を足蹴にした。


 彼は、昔からときおり子どもみたいな仕種を見せる。


「それで? そんなことを確認しにわざわざこのような森まで? だったら、ほんとうに物好きですね。というか、もう放っておいてもらえませんか? 夫は、死んだ。そして、わたしは引退済みです。いまさら関係ないでしょう?」


 ほんとうにそうである。


 あれから三年。わたしの動向を気にかけるにはしつこすぎる。


「あっ、それとも、わたしが自棄を起こして敵国や新聞社などに情報を売るとか、漏らすとか、それを疑っているのですか? それならば、まずありえませんね。自棄を起こしてなにか行動を起こすなら、自分で確かめに行きますよ。自分の目で見、あるいはこれ以上にないほどの情報を自身でつかめば、それで納得がいくでしょうから。もしくは、諦めることができるかもしれません」


 自分で言いながら、ふと「それもありかも」という考えが心と頭の中をよぎった。


 よぎった瞬間、「しまった」と後悔した。


 何も考えず、思わないようにしなければならないのに、それをやってしまった。


(やはり、いまのわたしはダメダメね)


「ほらみろ、やはりあいつのことをまだ諦めていないんだろうが」

「それが『レディ心』というものなのです。あるいは、『新妻の気持ち』というべきでしょうか」

「なんだって? レディだって? 新妻だって? 笑っちまう」


 仕方なく、少佐の気をそらすことを試みた。


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