まともや回避成功!
「大佐。わたしたち、今夜こそ話し合わねばなりませんね。わたしがご婦人方とお茶を飲んでいる間、ブラックストン公爵とどのような話をされていたかも知りたいですし」
屋敷までの道中の馬車内である。
わたしは、前夜同様大佐に迫った。
今夜もこの手で回避したい。
「大佐との夜のエクササイズ」のことである。
案の定、大佐はあからさまに鬱陶しがった。
「いったいどうなっているのか、さっぱりわからないのです。ですから、ちゃんと状況を確認したいのです。明日は王宮でパーティーです。しかも、だれかと会うのですよね? それがだれなのか、大佐は公爵から聞いたのではないですか?」
「ブラックストン公爵とは、たいした話はしていない。政界や社交界の主要メンバーのこと。それから、現在の政治経済などの状況を教えてもらっただけだ。それは、すでにおまえの頭の中にも入っているはずだ」
いまの大佐の言葉がほんとうかどうかはわからない。しかし、まったくほんとうではないはずである。
大佐は、それ以上なにも言うつもりはないらしい。
「彼女は、ニューランズ伯爵家のひとり娘だ」
まったく関係のない、エレノアのことを言いだした。
「ということは、彼女が嫁いだのではなく、彼女の夫が養子に入ったわけですね」
仕方がない。だから話を合わせることにした。
「大佐は、その夫のことをご存知なのですか? 資料にはありませんでしたよね?」
「いや、知らん。彼女のことは知っていたがね。夫のことは、初耳だ」
「そうですか……」
それきり、ふたりとも口をつぐんだ。
わたしだけでなく、大佐もなにかモヤモヤするものがあるのかもしれない。
夕食後、わざと主寝室に乗り込んで再度話し合いを要求した。
が、大佐はわたしを主寝室から追い出した。
そうして、この夜も回避できた。
もちろん、大佐との夜のエクササイズのことである。




