しあわせにする
居間でホットココアとマドレーヌをいただいた。
当たり前だけど、ニック中心の会話になってしまう。
ニックは、控えめにいっても可愛すぎる。まるで天使のよう。
いいや。彼は、まさしく天使である。
クラリスが彼にまいっているのもムリはない。
わたしもまいってしまった。
エレノアは、会話の中で何度も言っていた。
「夫は、とても子煩悩です。ニックのことを溺愛しています。彼は、ほんとうにニックを可愛がっています。わたしがヤキモチをやくほどです。ですが、夫はわたしも愛してくれます。大切にしてくれます」
エレノアの夫のカイルは、よほどできた夫なのだろう。
子ども想いで妻想いの……。
「家族思いの夫をもって、わたしもニックもしあわせ者です」
エレノアは、やさしく微笑んで続ける。
「彼は、『きみたちをぜったいにしあわせにする。きみたちを全力で愛する。全力で守る。全力でしあわせにする』。そう誓ってくれました。そして、そうしてくれています。わたしは、いいえ、彼とニックとわたしは、いま最高にしあわせなのです」
エレノアは、そういってさらにやさしい笑みを浮かべた。
彼女は、心からそう思っている。
ほんとうにしあわせなのだと、つくづく感じた。
しかし、彼女の言葉に驚きもした。
エレノアの言った彼女の夫の誓いは、夫がわたしに誓ったのとほぼ同じだったからである。厳密にいえば、「おまえ」と「きみ」という呼称以外は同じだった。
(そうよね。男性ってたいていはそう言うわよね)
男性のありきたりな台詞といえばありきたりである。めずらしくもなんともない、シンプルな台詞である。
しかし、なぜか心がざわめいた。
どこにでもある恋人や旦那の台詞。それでは片付けられない。なにかがひっかかった。
「やあ、レディたち。レディトークは、楽しかったかね?」
モヤモヤし始めたタイミングで、居間にデリクと大佐が入ってきた。
「シヅ、明日のパーティーで会いしましょうね。あなたには、夫に是非とも会っていただきたいから」
「ええ、エレノア。楽しみにしているわ」
エレノアと約束し、ブラックストン公爵夫人主催の午後のお茶会を終えた。




