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奥様方のお茶会

 今日もまた、ブラックストン公爵夫妻は大歓迎してくれた。


 お茶会の準備は、すでにできているらしい。


 広大な庭にある東屋のテーブル上には、お茶はもちろんのことスイーツやサンドイッチやフルーツがところ狭しと並んでいる。


(そういえば、バタバタしていて朝食を食べて以来なにも食べていないわね)


 美味しそうな食べ物を見た瞬間、お腹の虫が自己主張を始めた。


「はしたなくてすみません」


 恥ずかしすぎる。すぐにクラリスに謝罪した。


 ベイリアル王国のレディは、ところかまわず生理的欲求をしまくるのかと思われてしまう。


 それは、あくまでもわたし個人のこと。他のベイリアル王国のレディたちは、そんなことはない。


 クラリスは、やさしく笑った。


「シヅ、いいのよ。緊張でガチガチになっているよりかは、ずっといいわ。きっと、たのしくすごせるわよ。シヅ、お茶会が終ったらあらためて紹介したい人がいるの。その人、今日のお茶会のメンバーのひとりなの。とてもいい人よ。あなたとも年齢が近いはずだから、すぐに仲良くなれると思うわ。それと、明日のドレスだけれど、よければわたしのを使ってくれないかしら? もちろん、あなたが見て気に入るものがあったらだけど。気に入る色やデザインのものがあれば、是非着てみて欲しいの」


 クラリスの唐突なまでの提案だった。その提案で、やはりいま着用しているこの時代遅れのドレスは、いろいろな意味でそぐわないないのだと悟った。


 だから、よろこんで彼女の提案を受け入れた。というよりか、こちらからお願いした。



 わたしたちがこうしている間、大佐はデリクの執務室で話をしている。


 彼の目がなくなり、ある意味気が楽になった。


 大佐のことは、現役時代から苦手だった。その理由は、上司だからということはもちろんのこと、彼がのわたしにたいする視線が異様だったからである。彼の目が、生理的に受け付けなかった。あの蒼い瞳でジッと見つめられると、落ち着かない。心がザワザワしたし、うなじはさらにザワザワした。


 大佐が上司であり先輩であり同業者であるということをのぞいても、彼のわたしを見る目はどうも気味が悪い。


 図書館で任務を与えられたり、軍の事務棟の広報室で会ったりというくらいなら、まだ耐えられなくもなかった。


 しかし、いまは違う。


 ずっといっしょにいる。それこそ、寝台をともにするようになれば、トイレと風呂以外はいっしょにいることになる。


 もっとも、彼がどこかに働きにでも行ってくれれば、日中は自由になれるけれど。


 すくなくとも、いまの時点ではそれも望みはない。


 というわけで、たとえわずかな時間でも、彼の蒼い瞳から逃れたい。逃れられるのなら、その時間をおおいに楽しみたい。


 そう決意して臨んだお茶会。


 結論をいうと、お茶会そのものは可もなく不可もなかった。


 集まったのは、わたしも含めて六名。全員が爵位のある夫を持っている。そして、クラリスのボランティア友達でもある。


 そのため、話の内容はほとんどがそういう系だった。したがって、こちらの欲しい情報や有益なネタなどはなかった。


 とはいえ、関係ないからとそ知らぬふりや関心がなさそうにするわけにはいかない。


 すすんで話に参加した。



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