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誹謗中傷に傷ついちゃう?

 お茶会の日、その準備はもちろんのこと翌日の王宮でのパーティーの準備に追われる羽目に陥った。


 大佐とは、寝台でのエクササイズは抜きにして本気で打ち合わせをしたかった。


 昨夜は寝台の上にひとりで横になってから、得た情報をまとめようと思った。


 しかし、よほど安心したらしい。大佐との夜のエクササイズを回避できたから、というだけではない。いろいろなことが、である。


 気がつけば寝落ちしていた。


 訂正。不覚にも、瞼を閉じた瞬間に眠ってしまっていた。


 寝台の上に横になる前、サイドテーブルに準備されていた水に即効性の眠り薬でも仕込まれていたかのように、意識をなくしたのだ。


 結局、かなりはやい時間に目が覚めた。


 そこから考えればよかったけれど、脳はそれを欲さずに体を動かすことを望んだ。


 この朝は、遠慮しなかった。


 屋敷のまわりをグルグルジョギングしたのだ。


「血みどろの森」を駆けまわったときと同じように。獣を追い、ときには追いかけられたときと同じように。


 無心で走るのは、ほんとうに気持ちがいい。


 まだ夜明け前の鋭く冷たい夜気の中、皮膚にじんわりと汗が浮かんでくる。


 そこまで走りこんだ頃には、身も心も引き締まり、スッキリした。


 朝食時、大佐がひくほどテンションが上がっていたのは、そういうわけである。


 そして、その大佐とは打ち合わせどころか文字通り面突き合わせる暇がなかった。


 やっと落ち着いて向き合ったのが、ブラックストン公爵家からの迎えの馬車の中である。


「お茶会で粗相はもちろんのこと、キレたり啖呵を切ったりするなよ。それから、下手な正義感を振りかざしたり、攻撃したりもな。それと、笑わせすぎたり……」


 大佐はふたりきりになって視線が合うと口を開くなり、いわれなき誹謗中傷を叩きつけてきた。


「ちょっと待って下さい。わたしっていったいどういうレディなのです?」


 さすがにムカッときた。傷ついた。


 声を荒げてしまったのは仕方がない。


「忠告したままだ。声を荒げたということは、おまえも自覚しているからだろう?」

「……」


 黙ってしまった。


 たしかに、昔の任務の中でそんな感じだったこともあるかもしれない。しかし、それが為に任務を失敗したとか窮地に陥ったとかは一度もなかった。


 そのはずである。


(いえ、ちょっと待って。もしかして、夫がフォローしてくれて事なきを得ていたとか?)


 夫なら、さりげなくわたしのフォローをしてくれたかも。しかも、それをわたしに誇ったりあてつけがましくしたりはいっさいしない。


 一瞬、焦った。


 しかし、いまはどうでもいい。


 とにかく、任務で妻を演じている以上そんなことはぜったいにない、といえる。


 と考えている間に、ブラックストン公爵家に到着した。

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