表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/172

使用人? いいえ、監視人たち

 使用人たちとは、朝食の前にあらためて挨拶を交わした。


 使用人を演じる四名の監視者たちは、わたしをうならせるほどそれぞれの役を完璧に演じている。


 わたしも負けてはいられない。


「すでに聞いているかと思いますが、わたしは元軍人です。ですから、貴族令嬢だとか貴族の妻にはほど遠く、粗野で不器用なのです。ドレスさえ、着こなす自信がありません。今後、マクレイ国の貴族の方々とのお付き合いもありますが、恥をかく場面があると断言できます」


 大佐は、わたしの冗談に大笑いした。すると、使用人たちも控えめに笑う。


 冗談を言って笑いを取るのが目的ではない。じつは、冗談っぽく言って真実を伝えたかっただけである。


「というわけで、今後、わたしのことで他の屋敷の使用人たちからバカにされるかもしれません。いまのうちに謝罪しておきます。それから、あらためてよろしくお願いします。この国で生活するにあたり、みなさんの助けが必要となります。どうかみなさん。夫とわたしにみなさんの知識や能力を貸してください」


 深々と頭を下げておいた。


 下手にでるつもりはない。


 しかし、大佐とわたしが動きやすよう、彼らにいい印象を与えておきたい。


「妻の言う通りだ。このマクレイ国のことはなにもわからない。妻とわたしにみんなの知恵を借りたい。情報を与えてもらいたい。わたしはともかく、妻にはすこしでも快適に生活をしてもらいたいから。もちろん、それだけのことは報いるつもりだ」

「あなた……」


 大佐も抜かりない。わたしに合わせてきた。


 わたしたちは夫を思い、妻を思い合う仲のいい夫婦で、使用人にたいしてもいい主人であることを彼らに印象付けられたはず。


「奥様、旦那様。わたしたちは、最初からおふたりに誠心誠意尽くすつもりです。おふたりがこのマクレイ国でよりよい生活を送れるよう、微力ながらお仕えさせていただきます」


 執事のフィリップ・レイトンも抜かりはない。


 彼が言い、四人は同時に頭を下げた。


 あとは、メイドのふたりをよりいっそう懐柔しておきたい。


 味方に、とまではいかなくても、よろこんで情報を流してくれるような関係を築いておかなければならない。


 メイドのカミラ・パーキンズとナンシー・スナイドルに全力の笑顔を向けつつ、内心で気合を入れた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ