わたしが大国の女王に?
しかし、わたしにはもっと言いたいことがある。ほんとうに言いたいことがある。
それは、ベンのことである。言いたいこと、とは違うかもしれない。
言いたいことではなく、責めたかった。
ベンを死なせたことを。
もっとも、ベンはほんとうは生きていて、いま記憶喪失になっているけれど。あるいは、記憶喪失のふりをしているけれど。
「わたしは、カーティスに飼われているのでも利用されているのでもない」
そのとき、大佐が隣で憮然とした表情で言い放った。
「おまえのためだ、と言っただろう? おまえの側にいるため、カーティスの話にのっただけだ」
「は? わたしのため? 正直、信じられないのですが。それならもっとわたしを大切にしたらどうなのです?」
鼻で笑ってしまった。
「サミュエルからこれだけは聞きました。わたしが狙われている理由を。このわたしがオールドリッチ王国の支配者、つまり女王になる権利があるのだと。そして、いままさしくオールドリッチ王国は後継者争いで揉めに揉めていて、わたしもその渦中にあるのだと。そのわたしが女王になるのを阻止するため、野心家たちがこぞってこのわたしの首を欲しがっていると。胡散臭い話ではありますがね。このわたしが一国の女王ですよ? 想像がつきますか?」
「いや、まったく想像できん」
大佐はソッコーだった。
「いや、大佐。そこは、『そんなことはない。言われれば、気品があるからな』とか言えないんですか?」
おもわず、ツッコんでいた。
「いや、言われてもピンとこない。ナイフを振り回したり、強面野郎どもをぶっ飛ばしたり蹴り飛ばしたりする女王は、どこの大陸のどんな国にも存在しないだろう」
大佐は、またもやソッコーだった。
サミュエルだけでなく、カーティスとライオネルも笑っている。
そして、ベン、ではなくカイルも。
「悪かったですね。でも、書物の中にはいますよ。読んだことがあります。お転婆王女様とか」
「書物は嘘の世界だろう?」
返す言葉もない。
「とういうか、そこじゃありません」
自分で吹っ掛けたけれど、旗色が悪いので自分で軌道修正した。
「あのなぁ、おまえが言いだしたことだろう……」
「あああああああっ!」
急にひらめいた。大佐が睨みつけてきたけれどかまわない。
全力で叫んでしまった。
「い、いったいなんだ?」
悲鳴にも似たわたしの叫び声に、大佐は物理的におもいっきりひいている。




