表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
162/172

「きみのため」と「おまえのため」って、どういうこと?

(また面白くなってきたわ)


 カーティスと大佐が取っ組み合いのケンカなりそうなのを見、ニヤニヤしてしまっていた。


 自分のトラブルや揉め事は勘弁してもらいたいけれど、他人のそれらを見るのは嫌いではない。


(わたしって、イヤーなレディよね?)


 つくづく思う。


「なにがおかしい?」

「なにがおかしいんだ?」


 カーティスと大佐が、同時にこちらを向いてニヤニヤ笑いを指摘してきた。


「だって、揉めてるのって面白いんですもの」

「笑っている場合か? きみのためのケンカだぞ」

「ヘラヘラしている場合か? おまえのために揉めているんだぞ」


 そして、彼らは同時にわたしへと矛先を向けた。


「は? え? わたし? どうして?」


「きみのため」とか「おまえのため」って、どういうこと?


「まさか気がついていないのか?」


 驚愕の叫びをあげたのは、当のカーティスと大佐ではなかった。


 それは、謎の人物サミュエルだ。


 彼は、杖でカーティスと大佐を指した。


「ふたりは、きみをたいそう気に入っているようだ。カーティスにいたっては、きみを利用するつもりだったのに、その気持ちをかえてしまうほど気に入っているらしい。きみにたいする気持ちに関しては、きみの元上司もカーティスに負けてはいないだろう」

「ああ、なるほど。気に入っていただけて光栄ですが、それで揉める必要はないと思います」

「シヅ、ここまで言ってもまだ気がつかないのか? どうやらきみは、そうとう鈍感、いや失礼。人のそういう気持ちや感情にはうといようだ」

「そうですね。人の気持ちは、プライベートでも任務中でも極力考えないようにしています。だってほら、いろいろ面倒臭いでしょう?」


 両肩をすくめた。


 厳密には、他人の感情や思いにふりまわされたくないのだ。


 ただし、それもベンだけは別。彼の気持ちは最優先だし、感情だって同様に「ファースト」である。


 ベンにだけは、ふりまわされてもいい。


 いいや。ふりまわされたいくらいだ。


「ハハハ! これは面白い。おっと失礼。またもや失言だ。いや、たしかにその通りだ。というわけだ、おふたりさん。いくらきみらが揉めようと殴り合おうと、彼女はきみらにはまったく興味がない。そういう気持ちや感情においては、な。それに、彼女にはそういう気持ちや感情を大切にする相手がいるからな。どだいムダなことだ」


 サミュエルが諭すと、カーティスと大佐はとりあえず離れてこれまでいた場所へと戻った。


 とはいえ、ふたりとも心から納得しているふうではないけれど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ