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は? わたしがなにですって?

 馬車は、いつものように王宮の正門を通過しようとした。


 カイルがいるので難なく通過できるはずだった。


 しかし、この日は違った。


 門衛たちの様子がおかしいのである。


 いつもだったら、正門は一個小隊ほどの人数で守っている。しかし、この日は「こんなに門衛がいるんだ」と驚くほどの人数の門衛がいる。しかも、全員が左右に居並び、最敬礼をしている。


 頭の上にいくつものクエスチョンマークが浮かびまくっている。そんな状態のわたしを乗せたわが家の馬車は、王宮内を宮殿に向って駆けていく。


 左右にひろがる庭園では、定期的にメンテナンスや整備が行われているらしい。


 多くの庭師や雑用係で賑わっている。


 それをなんの気なしに見つめていると、馬車が停車した。


 この日は、客殿ではなかった。


 本殿の前で停車した。


 ここでも不可思議なことが起こっていた。


 本殿の前に多くの人が集まっているのである。


 その一番目立つところに、これから会う予定のカーティスが立っている。


 なぜか正装姿の彼は、この日もあいかわらずキラキラ輝いている。それはもう頭上で輝く太陽よりずっとずっと光を放っている。目がくらんでふらついてしまうかもしれないほどである。


 馬車の扉が開き、先に大佐とカイルが降りた。


 わたしが降りようとすると、わたしをエスコートしようと馬車内に分厚くてタコだらけの右手が伸びてきた。


 カーティスの右手である。


 その腕を拒否する権利や理由はない。だから、その手を取って馬車を降りた。


 その瞬間、集まっている人たちから歓声が上がった。


(は?)


 ってなるのは当然だろう。


 人々の向こう側、宮殿の前階段上に役立たず王子や王女やその伴侶やパートナーたちが見える。


 そのいずれもが、憎々し気というか腹立たし気というか、とにかく敵意満々の表情を浮かべてこちらを睨みつけている。


 というか、カーティスの背に刃のごとき視線を突き刺している。


 その時点ですごく嫌な予感がした。


 同時に、うなじがざわめき始めた。


 そのざわめきは、身の危険を知らせるものではない。


 いや、たしかに身の危険なのであるが、種類の違う危険である。


「王子殿下、王子妃殿下、おめでとうございます」

「おめでとうございます」


 カーティスにエスコートされて殿前の階段へと歩きはじめた瞬間、さらにおおきな歓声が起こった。


「王子妃殿下ですって? どういうことなのです?」


 歓声がはっきり聞き取れたいま、いくらわたしでもポーカーフェイスを保つことは難しい。というか、だれだって平静ではいられないだろう。


 さすがに大声や怒鳴ることはしなかった。控えめな声量のかわりに、語気を鋭くした。それこそ、カーティスの全身を切り刻みそうなほど。


 カーティスに尋ねずにはいられない。


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