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行動制限なんてイヤよ

「シヅ、なんだって?」

「閣下、王宮ですごすことです。ああいう連中は、どこにでも侵入してきます。他愛のない小虫や害獣と同じです。だったら、連中をあぶりだす意味でもわざと目立ってやりますよ」

「ダメだ。シヅ、きみは自分の立場がわかっているのか?」

「立場?」


 カーティスのことを鼻で笑ってしまった。


「わたしは、ベイリアル王国軍の元大佐スチュアート・マクファーレンの妻で、夫とともに亡命してきた貧乏人です。けっして金持ちでも重要人物でもありません。ましてやキーパーソンでも。だから、いままでどおりにさせていただきます。そんなに心配していただくのでしたら、いくらでも見張りをつけていただいても結構です」


 カーティスを怒らせてはならない。彼は、なにせ将軍であり王子。本来なら、有無を言わせずわたしを従わせることができる身分なのだ。


 なんなら、彼はわたしを投獄することだってできる。


 しかし、彼はわたしがなにも知らないと思っている。一方的に権力を行使することは、彼の性格上できないだろう。


 それに賭けてみた。


「わかった。護衛をつけさせてもらう。それから、条件もだ」


(やった!)


 賭けに勝った。というか、カーティスとの駆け引きに勝利した。


 が、すぐに負けを悟ることになった。


 自分のバカさと愚かさと早とちりと迂闊さとその他もろもろを、後悔する羽目に陥った。



「シヅお姉様っ!」


 ニックがわたしに抱きついてきた。彼が抱きつきやすようにと、彼が駆け寄ってくるまでに両膝を折っておくことを忘れない。


「ニック、心配かけてごめんね」


 可愛すぎる。尊すぎる。


 わたしの推し。わたしの癒し。わたしの天使。


 ニックをギュギュギューッと抱きしめた。


(あー、癒される。ムカつくこととかイライラすることとか、すべてのことが浄化されるようだわ)


 ニック?さえいれば、他はなにもいらない。お腹がいっぱい。それこそ、食べ物もいらないかも。


 あ、それはないか。


 一瞬、ベンのかわりにニックを連れてどこか静かなところで暮らすのもいいかもしれない、なんて考えてしまった。


 あ、それもないわね。


 ちいさな体を抱きしめながら、そんなお茶目な思いつきに苦笑してしまった。


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