表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/172

胸が痛んでしょうがない

 エレノアを抱きしめるカイルを見て、胸が痛んだ。ズキズキと鈍い痛みで胸が締めつけられた。


 見ていられないはずなのに、他へ目を向けることができなかった。


 エレノアを抱きしめるカイルを、いや、死んだはずの夫ベンを、彼女から引き剥がしたかった。引き剥がし、かわりにわたしを抱きしめて欲しい。


 いや、わたしが彼を抱きしめたい。


 わたしを心配するあまり、みんながハグしてくれた。しかし、カイルだけはハグどころか近づきさえしてくれなかった。それどころか、言葉のひとつもよこさなかった。


(あっ、大佐もハグはなかった。だけど、それはどうでもいい。その大佐でさえ、言葉をかけてくれた。まぁ、嫌味と皮肉と苦言と叱責だったけれど。それでも、一応心配しているふうは装っていた。それなのに、カイルは、いや、ベンは……)


「エレノア、すまない。誤解があるようだ。あれは、強盗だった。ただし、連中は金目のものだけでなく、場合によってはシヅをも害そうとしていたんだ」

「エレノア、カイルの言う通りだ。すまない。おれの言い方が悪かった。連中は、シヅが大金持ちの亡命者だと勘違いしていたらしい」


 なんと、カイルだけでなくカーティスまでわたしのせいにした。というか、まるでわたしがニューランズ伯爵家に災厄を招き入れた悪者のように仕立てあげた。


 たしかに、まったくの見当違いではないけれど。それでも、すこしだけ不本意だ。納得がいきそうにない。


「そうだったのね。だけど、シヅのことをどうして大金持ちだなんて勘違いをしたのかしら?」


 エレノアは、彼らのバレバレの嘘をあっさり信じた。


 しかも、彼女はわたしが「大金持ち」にはまったく見えないし、思えないらしい。


「イヤです」


 一方的に悪者にされた腹いせではないけれど、キッパリすっきりハッキリ拒否した。


 カーティスの「王宮ですごす」、という提案のことである。


 王宮に縛りつけられ、つねに監視されるのは勘弁してもらいたい。自由を奪われるばかりか、外界との接触を断たれてしまう。具体的には、今後接触する必要のある謎の人物サミュエルと会うことができなくなってしまう。


 それだけは、なんとしてでも回避しなければならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ