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わたしってそんなにヤバいの?

「命を狙われるって……。イヤだわ。わたし、そんなヤバいことをしでかしていたの? いつ? どこで? だれに? 命を狙われるって、何者かの意趣返しとしか考えようがない。この前の誘拐犯グループ? それは違うわよね。じゃあ、過去の案件で敵対していただれかかしら? そんな敵は吐いて捨てるほどいるから……。このマクレイ国だけでも、元政治家から元軍人までいろいろいるわ。もっとも、そんな人たちはとっくの昔に粛清や対処されてしまっているけれど。とにかく、過去のことまで考えたらきりがない」


 わが身を抱きしめ、不安気につぶやいた。


 どうか混乱と不安のオーラがでまくっていますようにと祈りつつ。


「シヅ。きみに不安を抱かせたり、ましてや脅すつもりはないが、きみは狙われているのだ。きみ自身の命をだ。先日のニューランズ伯爵家での騒動。きみは勘違いしているようだが、あれはエレノアとニックが狙われたのではなかった。最初からきみを狙ってのことだったんだ」

「そ、そんな……」


 自分のこののっぺり顔を蒼白にするという技は、役者でもそうなかなかできるものではない。


 ショックのあまりふらつくという演技まで追加しておいた。


「シヅ。きみは、外を出歩くどころか屋敷に滞在するのも危険だ。よければ、ここにいるといい。ここなら、連中もそう簡単には侵入できないから」


(カーティス、そうきたのね?)


 カーティスは、とうとう行動の制限までかけてきた。


 彼は焦り始めている。いや、焦りまくっている。


 彼は、ついに本格的に行動を起こすことにしたらしい。


「どうして? どうしてシヅが? 彼女が命を狙われることに? あなた、先日のは強盗だったのよね?」


 そのとき、エレノアが呟くように言った。見た目には、わたしよりよほど混乱や不安になっている。


 彼女の視線の先には、彼女の夫であるカイルがいる。そして、彼女はその美しい顔をカーティスへと向けた。


「そうよね、カーティス?」


 そして、キラキラ王子に訴えた。


 しかも敬称を用いずに。


 それはともかく、このときになってはじめてカイルだけがわたしにハグしてこなかったことに気がついた。それどころか、彼はわたしに近づきさえしなかった。


 そのカイルと視線が合った。


 が、それも半瞬以下のことだった。


 彼のそれは、すぐに彼自身が愛する妻へと向いた。そのときには、愛する妻に近づき抱きしめている。


 そのカイルのすべての所作が自然で当然のようだった。


 まるで息をするかのようだった。





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