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カーティスに会うのってめんどくさっ!

 馬車の向かう先は、てっきりエレノアとカイルのニューランズ伯爵家だとばかり思っていた。もしくは、デニスとクラリスのブラックストン公爵家か。


 が、どちらも違った。


 馬車は王宮の正門をくぐり、長い間王宮の馬車道を走って森を抜けて建物群を通過した。そして、ついに客殿の前で停まった。


(なにこれ? カーティスに会うわけ? 面倒臭すぎるわ)


 キラキラ王子カーティスのもとへ行くわけである。カーティスだけではない。彼のところにみんなも集まっているはず。そして、わたしの到着を手ぐすね引いて待っているのだ。


 カーティスがいるとなると、よりいっそう面倒臭い。鬱陶しいことこの上ない。


 しかし、いまさら引き返せない。というか、大佐の制止を振りきって引き返すのも面倒臭い。


 馬車を降りる前、大佐はまたわたしの手首を握った。しかも、屋敷を出る前のときと同様全力の握りだ。


 降りてからは、ひきずる勢いでわたしをひっぱった。


「大佐、大佐。ここまできたら逃げも隠れもしません。観念しています。ですから、手を離してもらえませんか?」

「ダメだ。おまえはなにをしでかすかわからん」

「なんですって? これでも一応、表向きはあなたの妻ですよ。それを『なにをしでかすかわからん』とは、失礼にもほどがあるでしょう?」

「とにかく、ダメだ。このまま連行する」

「は? 連行? 犯罪者ですか、わたしは? とにかく、痛いのです。どうせなら、ふつうにエスコートしてくださいよ。夫が妻をエスコートする正式な作法があるでしょう? というか、こんな恰好で王宮内をウロウロして大丈夫なのですか?」


 大佐のわたしにたいする失礼っぷりは半端ない。まぁそれはどうでもいいとして、王宮をシャツにズボンという姿で訪問するのはいかがなものだろうか? しかもズボンの微妙なところが破けているし、シャツは砂塵や血で汚れたり破けたりしている。


 大佐はスーツだけど、わたしは場違いすぎる。


「ここにはだれもこない。というか、恰好よりかんじんなことがあるだろう?」


 大佐はにべもない。ついでに慈悲もない。


 そうして、客殿のカーティスが執務室として使っている部屋に連行された。


「シヅ」

「シヅ」


 執務室の扉をノックした後、大佐が先に入室した。つづいてわたしも足を踏み入れた。その瞬間、抱きつかれてしまった。


 クラリスとエレノアに、である。


 ふたりは、わたしを頬ずりする勢いでハグした。


 そのあまりの勢いに、うしろにひっくり返りそうになった。




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