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パワハラだわ!

「なるほど。それで大佐が屋敷にいるわけですね」

「バカ者っ! おまえを心配してのことだろうが。エレノアやカイルだけではない。デニスとクラリス。それから、カーティス、いや、閣下も心配している。閣下にいたっては、すぐに街に工作員たちを送り込むと言いだす始末だ。おまえはときどき放浪癖がでるから、今回も探検がてらブラブラしているだけだろうと閣下に言ったのだが……。もう送り込んでいるかもな」

「そんなおおげさな。子どもじゃあるまいし」

「間抜け野郎っ! どの口がそんなことをほざくのだ?」


 バカとか間抜けとか、これは上司として完璧にアウトである。


 パワハラすぎる。


 とはいえ、みんなが心配をしている。


 いままでだったら素直に心配をかけたことを反省しただろう。それから、心配してくれている人がいることに感動しただろう。


 しかし、いまは違う。


 謎の人物サミュエルに会い、話をきいたいま素直になれない自分がいる。


 それどころか、みんなを疑ってかかっている自分がいる。


 知らなくていいことを知ったから?


 知らなかった方がよかった?


 後悔先に立たず、である。


 聞かないという選択肢は、なかったといえばなかった。しかし、ほんとうに聞きたくなかったのならば、そうできたこともたしかだ。


 とはいえ、もう遅すぎる。書物のように時間を戻したり過去に戻ったりすることはできないのだから。


 いずれにせよ、カーティスに会いたくない。いまは、だけど。それは、死んだはずの夫ベンも含めて。


 とにかく、だれにも会いたくない。


 とはいえ、会わないわけにはいかないこともたしかなこと。


 わたしのことを心配しているというのも、それぞれがそれぞれの思惑や下心があってのこと。それはわかっている。いまは、だけど。


 もしもわたしのことをほんとうに心配してくれているとしたら? わずかでも本気で思ってくれているるとしたら?


 そんな甘すぎることを期待している自分は、やはりダメダメになり下がったのかもしれない。裏切りやだまし合いが横行し、それが日常茶飯事の世界の中でそんなありえないことを心のどこかで望んでいるのは、焼きがまわった証拠だ。


 そんなこともひっくるめて、よくわかっているつもりである。


 自分自身のダメっぷりが。


 いずれにせよ、いまは行くしかない。


 大佐と行く行かないでケンカをしたり、理由を考え説明したりすることを思えば、いっそ行ってしまった方が楽である。


 そうにきまっている。


 行って謝罪し、てきとうにごまかしはぐらかせばいい。


 そして、さっさと帰ってきてとりあえず整理しよう。頭と心を。


 そのように考えている間に、大佐に馬車に放り込まれていた。そして、さっさと出発していた。


 どうやら今日は、わたしにとって最悪の日らしい。


 といっても、最悪の日は人生の中で多々ある。今日は、そのうちの一日というわけ。


 そして、馬車で連れまわされる日でもある。


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