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謎の人物 2

「統計だよ。きみのような黒髪と黒い瞳を持つレディの一般的な睫毛の本数だ。上が百二十本。下が三十本。そのような統計があって、文献で見たことがある。その本数を言っただけだ。だから、実際のところはわからない」

「なるほど」


 おもわずうなってしまった。


 サミュエルは雑学的な知識が豊富なだけでなく、それをうまく使いこなせるようだ。


「ずいぶんとユーモアのセンスがあるんですね」


 こういう人は嫌いではない。


「ありがとう。きみもいまのですこしは気持ちがラクになったかな? 緊張したり不安を抱いていないと自分では思っていても、どうしても構えてしまう。それは、なにも恥ずべきことではない。わたしだってそうだからね」

「ええ、おっしゃる通りです。それで、これだけ手の込んだご招待の真意は?」


 わざとらしく部屋の中を見まわした。ただし、サミュエルの護衛のごとく突っ立っている少佐だけは見ないようにした。


「それにしても、ずいぶんとわたしのことを信用なさっているのですね」

「誤解しないでくれたまえ。なにもきみを過小評価しているわけではない。ましてやバカにしているわけでもね。もっとも、彼はそうではないようだが」


 サミュエルは、自分のすぐ右斜め後ろに立っている少佐を杖で指した。


「護衛をつけていないのは、きみに敬意を表しているからだ。それから、敵意や害意がないということもね。そして、きみはそんなわたしに暴力を振るうはずがない。そのこともわかっている。だから、護衛は必要ないというわけだ。これがきみでなければ、一個小隊ほどの護衛をつけていただろう」


 サミュエルは、ちいさく笑った。


「そうですね。護衛が彼だけなら、とてもではないですがあなたは助からないでしょう。わたしだけでなく、そこらのチンピラでも」


 そこで少佐を見た。


「なんだと、このちんちくりんっ! おまえ、おれにヤラれたことを忘れたのか? 最高のよがり声をあげていたじゃないか」

「なんですって?」


 さすがに席を蹴り立つようなことはしなかった。しかし、おもいきり怒鳴り、少佐を睨みつけていた。


 いまのわたしは、諜報員としてすっかりダメダメになっている。つくづくそう感じる。というか、ムカつく少佐にたいしては、諜報員どころかレディとして人としてダメダメになってもかまわない。


 ダメダメになってもいいから、全力で少佐をぶっ飛ばしてやりたい。


 ヤバいエリアで爆死し損ねた彼を、あらためて爆死させてやりたい。




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