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謎の人物 1

「わたしは、サミュエルだ。そう呼んでくれたまえ」


 彼の顔は悪くない。疲弊しきっている感はあるものの、渋カッコいいといっても過言ではない。その渋カッコいい顔にやわらかい笑みが浮かんでいる。


 敵意や害意、ましてや殺意は感じられない。


 それらとは正反対のどこか懐かしいような感じというか、親密感さえがうかがえる。


 同じ瞳と髪の色だから?


 おたがいにめずらしい色をしているから?


 サミュエルと名乗った彼は、わたしとおなじ黒色の髪と瞳を持っている。


 黒髪に黒い瞳の人というのは、突然変異でそう生まれてこないかぎり遠い東の大陸のある地域に祖先を持つ人たちである。だから、わたしたちもずっとずっと先祖をたどっていけば、同じ国の人だったかもしれない。もしかすると、親族だったかもしれない。


 いままでにないこの感覚は、そういう遺伝子レベルで反応しているに違いない。


「サミュエル、その名は愛称ですか? それとも偽名? まぁ、どちらでもいいけれど。わたしは、名乗る必要ありませんね。あなたはすでにわたしの名を呼んでいますし、そこにいるバカ、もとい裏切者の元同僚からあれこれきいているでしょうから。わたしのすべてを。それこそ、わたしの睫毛の数まで把握されていることでしょう」


 颯爽と足を組んだ。


 自分を優位に見せるためにする動作だけど、この場合は違う。


 なんと、ズボンの微妙なところに微妙なおおきさの穴が開いているのを見つけてしまったのだ。


 ヤバいエリアで少佐とやりあったときに破けたに違いない。


 足を組んだのは、その穴を隠すためでもある。


 これでまた好きな衣類をダメにしてしまった。せっかく購入したものは、少佐と格闘したあとの爆発でなくなってしまった。いよいよもってヤバいかもしれない。


(やはり、買い直さなければ。大佐におねだりしよう。経費で落としてもらうのよ)


 そんなバカなことを考えている自分に自分でも驚いた。


 まだそれだけの余裕があるということだ。


「上下合わせて百五十本前後だよ、シヅ」


 くだらないことを考えていたものだから、サミュエルが言った意味がわからなかった。


「なんですって?」

「上下合わせて百五十本前後だと言ったのだよ」

「いったい、それは何の数……?」

「睫毛だよ。きみの睫毛の数だ」

「嘘っ!」


 叫んでいた。


 叫ぶなどということは、けっしてしてはならないのに。それほど驚いてしまった。


 自分自身把握しているわけはない。睫毛の数である。いちいち数えるほど暇ではない。た問え暇があったとしても、そこまで忍耐強くはない。


 それなのに、どうしてサミュエルが知っているの?

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