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微妙なやりとり

「ライオネル。あなたは、というよりかメルヴィル家はどのような商売をされているのですか? もしかすると、王宮でのパーティーで尋ねたかもしれませんね」


 王宮でのパーティーでは、たがいに名乗って握手を交わしただけである。しかし、一応そう言っておいた。


「扱っている商品は、多種多様です。ほんとうにさまざまなものを取り扱っています」


 ライオネルは、曖昧というよりかは無難な回答をよこした。


 無難な回答すぎて会話が続きそうにない。


「商売は順調ですか?」


 沈黙は、よりいっそう居心地が悪い。無理矢理にでも商売の話を続けることにした。


「ええ、お蔭様で」


 ライオネルのテカテカの丸顔にやわらかい笑みが浮かんだ。


「お蔭様で」、といわれるようなことをした覚えはない。


「それはよかったです」


 仕方がないので愛想笑いを返した。


「ターゲットにしている客層は、一般の方たちですか? それとも、いわゆる特権階級といわれるような人たちですか? 若者が多いのかしら? 中高年が多いのかしら?」


(屋敷にまだ到着しないの?)


 イライラしつつ、どうでもいい質問を重ねた。


 扱っている具体的な商品がわからないため、彼がターゲットにしている客層がまったくわからない。


 もっとも、知ったところでどうということはない。


「一番力を入れている商品に関しては、ターゲットはおもに特殊な人たちです。あとの商品は、ほんとうにさまざまな客層をターゲットにしています」

「そうですか」


 だんだん面倒くさくなってきた。


 任務では忍耐強いわたしも、こういう場面では我慢も忍耐も強くない。というか、ハッキリいって耐性がない。


 そのとき、車窓を流れる景色が見慣れたものではないことに気がついた。


「ああ、安心してください」


 ハッとしたことを表情にださなかった。すくなくとも、わたしはだしたつもりはない。


 しかし、目の前のテカテカ顔の男は、そういってやさしく笑った。


 そのやさしい笑みが胡散臭すぎた。だから、安心などできるわけはない。それどころか、イヤな予感がしはじめた。


(もしかして、ヤバいことに首を突っ込んだ?)


 しかし、いまのところうなじのざわざわ感は控えめである。警告レベルではない。このくらいのざわざわ感なら、ちょっとしたびっくりに見舞われる、あるいは起こる程度だろう。


 命を脅かすような、あるいはそれに類する危機に瀕しているわけではなさそうだ。


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