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わがままエレンの旦那様は気弱な大商人?

「シヅ、お礼が遅くなって申し訳ありません。本来なら、事件後すぐにでもうかがわねばならなかったのですが……」


 サンドイッチは、すぐに完食した。上品さは量にも反映していた。つまり、量がすくなかった。それこそ、味わう間もなく終わった。


 ライオネルは、わたしが食べ終るのを待っていたのだろう。ナプキンで口を拭ったタイミングで、そう切り出した。


「妻と息子を助けていただき、ほんとうにありがとうございました。じつは、ブラックストン公爵夫人からきいて驚いたのです」

「ああ、そのことですか?」


 慈善活動中に誘拐犯どもに連れ去られようとしたエレンとニックを助けたのだ。


 そういえば、あれからいろいろドタバタした。だから、すっかり忘れていた。


「いえ、たまたまです。先日の王宮でのパーティでお会いした際、夫とわたしのことはきいていただいていますよね?」


 ライオネルには、王宮でのパーティーで会っている。彼らは、大物商人夫妻。彼らも招待されていたのだ。


「わたしは、元軍人です。ああいう荒っぽいことには慣れているのです。ふたりが無事でよかったです」


 微笑んだ。あまり怖いレディだと思わせないために。


「あれ以降、ボディーガードを増やしました」

「そのようですね」


 ボディーガードたちは、いまもこれみよがしに部屋の外にいる。あのボディーガードたちなら、いざというときに役に立ちそうにない。もっとも、それはわたしの問題ではない。だから、指摘も苦言もしなかった。


 その後、エレンとライオネルと当たり障りのない会話をかわしたけれど、ずっと違和感がつきまとっていた。


 エレンにたいしてではない。その夫ライオネルにたいしてである。


 おそらく、最近いろいろありすぎて神経が過敏になりすぎているのだろう。


 だからこそ、素人であるライオネルになにかを感じてしまったのだろう。


 しばらくしてからお暇した。お言葉に甘え、メルヴィル家の馬車で送ってもらった。


 メルヴィル家のド派手な馬車は、街から上流階級の住む閑静なエリアへと入って行く。


 ライオネルは、このあと商談があるからとみずから送ってくれている。


 馬車は、外観だけでなく内装も金ぴかである。いたるところに金が使われている。金ぴかすぎてどうにも落ち着かない。ライオネルの汗ばむテカテカ顔が、よりいっそう居心地を悪くする。


 大人が三人ずつ腰かけられそうな向かい合わせの座席に、彼とふたりで向かい合っている。


 馬車内にはミニバーがあり、ガラスボックスの中には葡萄酒やブランデーといった酒類が入っているのが確認できる。




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