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ヤバい地域から脱出す

 その想定外すぎる攻撃に足が止まっていた。そして、振り向いてつい先程まであった建物を呆然と見つめていた。


 崩れてボロボロだった建物は、原形をとどめていないばかりかほとんど残ってはいない。まだ土煙が立っている。周囲の建物もとばっちりを食ったことはいうまでもない。壁や屋根がバラバラと音を立てて崩れていく。


(なんてことなの。わたしたちがテリトリーを侵したことを、ここのヤバい住人たちはよほど腹に据えかねたのね)


 火薬は貴重である。各国の軍でさえ、めったに使用しない。すくなくとも、祖国ベイリアル王国軍は、マクレイ国との戦争で一度も使用していない。もちろん、そこまで本気ではないのだけれど。そして、それはマクレイ国も同様である。


 そして、それは軍だけでなく悪行を生業とする連中も同様である。それから、反乱や謀反を試みるような連中も。


 とにかく、そうそう使われることのない火薬をこれだけ惜しみなく使うとは、このヤバいエリアの住人たちはよほど金貨を持っているか、材料を手に入れて作っているかのどちらかなのだろう。


(少佐もふっ飛んだかしら? お気の毒だわ。ご冥福を祈らないと)


 いまだ土煙が立ち、火薬のにおいが充満する中、しばし黙禱して少佐の死を悼んだ。


(って、そんな場合じゃないわ。逃げなきゃ)


 わたしは、まだ生きている。そういう連中なら、息の根を止めるまでしつこく襲ってくるだろう。


 瞬き半瞬ほどの黙祷の後、全力で走った。力のかぎり逃げた。


 奇蹟は起きた。


 なんと、迷うことなくこのヤバい地域から抜けだせたのである。


 きれいな建物が整然と並び、人通りや馬車の通りの激しいまともな地域が天国のように感じる。


(少佐の犠牲だけで助かるのかしら?)


 気の毒な少佐の安っぽい命ひとつでよかったのか?


 犠牲になった少佐。


 彼から話をきけなかったことだけが心残りでだが仕方がない。


 それよりも、せっかく購入したシャツとズボンをなくしたことが残念でならない。


 が、考えは甘かった。


 ずっと気配を感じるのだ。もちろん、少佐のものではない。少佐などよりよほど巧妙で狡猾な気配である。


 人ごみにまぎれこんだり、店に飛び込んで裏口から出させてもらったり、街馬車に乗るふうを装ったりいろいろ試してみたが巻くことができない。



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