三日間限定のひきこもり
死から蘇り、目が覚めてからの三日間、だれにも会わなかった。厳密には、カミラとナンシー以外の人には会わなかった。
大佐でさえ会わなかった。主寝室へと続く扉の鍵を閉め、けっしてそれを開けることはしなかった。
カミラとナンシーには、念のためもう数日養生しておくと説明してもらった。
三日の間には、カーティスとデニスとクラリスから見舞いの品や励ましの言葉が届いた。カーティスにいたっては、約束していた彼の行きつけの店の料理が届けられた。当然のことだけど、目が覚めるまでの三日間はなにも食べなかった。だから、料理やスイーツの差し入れは大歓迎だった。わが家の料理人サイモンの料理は、もちろん感謝感激しつつ完食した。その上でカーティスの差し入れもありがたくいただき、味わい尽くした。
体は正直である。心も正直である。
すこしでもはやく回復するために、体と心は栄養を欲していたのだ。
というのは言い訳だろう。とにかく、カミラとナンシーがおもいきりひくほど、というか呆れ返るほど食べまくった。
そんなわたしのお腹事情はともかく、わたしのことを気にかけてくれたのはカーティスたちだけではない。エレノアとニックは、毎日屋敷に来てくれた。ふたりに会おうと思えば会えた。だけど、わたしの痣やこぶだらけの姿をさらし、ニックを怖がらせたくなかった。だから、嘘をついて会わなかった。それなのに、ふたりはそんなわたしの嘘を信じ、会えなくてもいいからと毎日来てくれたのだ。
エレノアは、毎日殺人的に甘ったるい手作りスイーツを差し入れてくれた。
そういうわけで、三日間はだれにも会わず、食べて寝る以外は体力づくりに専念することができた。
はやい話が、ずっと部屋で鍛錬し続けたのである。
この三日の間、ベンも、いや、カイルもやってきた。
エレノアとニックとともに。
ほんとうは、カイルにだけは会いたかった。会って礼を言いたかった。
彼は、命を救ってくれた恩人。すぐにでも礼を伝えなければならないはずなのだ。
しかし、自信がなかった。
感情を抑制する自信が、である。
感情を抑制するどころか、爆発以上のものを引き起こしてしまう。
そちらの自信なら、かなりあった。
迷った。かなり迷った。何度も迷った。
(感情や欲望の赴くままに、流されるままにすればいいのよ)
どうせこの任務はバレている。すでにあってないような状態になっている。自分勝手な行動をとったところで、だれかに咎められるいわれはない。
そのはずである。
しかし……。




