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あいつのことは忘れてしまえ

「それよりも、ベンのことです。わたしを助けてくれたのは、たしかにベンでした。大佐もわかるでしょう? プロ中のプロ三人を瞬時にして、排除どころか抹殺したのですよ? あの手際は、間違いなくベンです。彼は、記憶を取り戻して……」

「やめろっ!」


 大佐の怒鳴り声に全身が震えた。それほど、いまの彼の怒声は厳しく鋭く激しかった。


「ベンは死んだ。それ以上でも以下でもない。おまえもそろそろそれを認めたらどうだ? 諦めたらどうだ?」

「はあ? そんなことできるわけありません。彼は、いえ、カイルは間違いなくベンなのです。大佐こそ、それを認めたらどうなのです? それとも、彼がベンだとなにか不都合でもあるのですか? 大佐はいったい、何を隠しているのですか?」

「だまれといっているだろう」


 恫喝以上のその叫びに再度全身が震えたときには、寝台の上におさえつけられていた。


 両手首は彼の左手に握られ、腹部は彼の右手におさえつけられている。


 いつの間にか、上掛けははぎとられていた。


「わたしが忘れさせてやる。わたしが奴のことをおまえの頭と心から消し去ってやる」


 彼の右手がゆっくりとずれ、下半身をまさぐり始めた。


「やめてください」


 まるで他人事のようにお願いした。自分が冷静であることに自分で驚きつつ。


「大佐」


 秘所をまさぐる彼の手は、わたしの願いをきいてくれそうにない。ゆっくり、そして粘り強くまさぐり求める。


 抵抗できないでいる自分が情けない。


 治癒力があろうと、まだそこまでの体力がないからである。


 情けなさで涙が溢れそうになるのを、彼を睨むことで持ち堪えた。歯を食いしばり、必死に耐えた。


「奥様? 奥様、どうかされましたか?」

「奥様、入りますよ」


 そのとき、カミラとナンシーが扉を叩き始めた。


 このときほど、彼女たちが監視していてくれたことをありがたく思ったことはない。


 このときほど、彼女たちの存在を尊く感じたことはなかった。


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