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襲撃者たちは、全員死んだらしい

「大佐も死んだってことなんてないですよね? ほんと、大佐と地獄めぐりだなんて勘弁してもらいたいですもの」

「そのままそっくり返そうじゃないか。わたしも死んでまであれこれうるさく言われたくないからな。わたしが死ぬ以前に、おまえなら死んでさえわたしの枕元に立って嫌味や文句をタラタラいうに違いない」

「ひどい。なんて上司なのかしら? というか、偽りとはいえ、あなたは一応わたしの夫ですよね?」


 大佐は、また溜息をつきつつ寝台の横に置いてある椅子に腰かけた。


「それで、暗殺者たちは? エレノアを襲うつもりだった連中は、五人とも相当場数を踏んでいるプロ中のプロでした。まぁ、いまさら報告するまでもないでしょうけど」


 大佐に上から見下ろされるより、同じ目線の方がずっといい。


 大佐の蒼色の瞳に映る自分は、控えめにいってもボロボロだ。いかにも寝込んでいました感がでまくっている。


「二名は、おまえに致命傷を負わされて舌を噛みきっていた。三名は、カイルが殺ったよ」

「舌を噛みきった? エレノアを始末するのに相当な覚悟だったのですね」


 違和感が半端ない。


 というか、すぐに自分の違和感の正体に気がついた。


「何者かに雇われた稼ぎの暗殺者ではないのですか? どこかに所属している暗殺者だと?」


 舌を噛みきるということは、逃げられずに捕まったときに口を割らないためである。ということは、雇われ暗殺者ではない可能性が高い。同じプロでも、金貨のために人を殺す連中と大義や忠義やその他のしがらみや信念のために人を殺す連中がいる。


 金貨のためならば、失敗を悟れば致命傷を負っていようとなんとしてでも逃げようとする。あるいは、諦めて捕まり、拷問に耐えきれなければ雇い主を売ってみずからは逃れようとする。


 しかし、後者は違う。そもそも心の持ちようが違う。


 彼らはだれかを殺める覚悟があるだけでなく、みずからの死も覚悟している。


 だからこそ、捕まらない。失敗を悟ればみずからの命を絶つ。


 そういう連中ほど厄介なものはない。


「どうしてそんな連中がエレノアを?」


 そう口に出してからまた気がついた。


「なるほど。ベン、いえ、カイルやカーティスへの警告かなにかですか? ということは、連中はオールドリッチ王国に属するプロということですねよね?」


 いまのは、推測ではない。そうとしか考えられないから。


 大佐は、わたしの推測を肯定するかのように何も答えなかった。




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