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千年前の大魔導師の生涯を知る旅に出た人類最弱魔法使いが、気づけば他種族最強クラスと一緒に旅をすることになった件  作者: 若狭巴
鬼王

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討伐

カルーナは灰となり風に飛ばされて消えていく死体に跪き祈りを捧げる。


せめてあの人達がこれ以上苦しむことはないようにと。


「この先にいるな」


修羅が全て焼き払うとフィーラの位置を特定する。


死体を全て燃やされ怒り狂って魔力が漏れたのだ。


「ちょっと行ってくるのね。皆ここで待っててね」


そう言うとクオンは走り出していく。


元々この依頼はクオンにきたものなので一人で倒すのはいいが、一人で行くのは話が違う。


なるべく被害を出させないように紫苑達を連れてきたのに、これでは意味がないとカルーナは頭を抱える。


「まぁ、カルちゃん。大丈夫だよ。相手がフィーラなら多少の被害は仕方ないと町の人達も納得してくれるよ」


被害が出ても魔物の支配から解放されるのだ。


大したことではない。


寧ろ泣いて感謝するだろうし、これからは町に活気が戻り発展もしていく。


山半分無くなったとしても許してもらえる自信が紫苑にはあった。


「そうですよね」


今更追いかけていっても着く頃には終わっている。


大人しくここで待っていようと決めたそのとき。


ドォーーンッ!


大きな音がした。


カルーナは音に驚いて体がビクッと震えたが、すぐにクオンが魔物を倒したのだろう。


「思ったよりすぐ終わりましたね」


「だね」


暫く経っても戻ってこないクオンを不思議に思い迎えに行く。


「クオン。どうしたの?」


カルーナがクオンを見つけ話しかけるも、何かをジーッと見つめていた。


クオンは日に当たっているのでよく見えるが、クオンより向こう側は木の影で暗くなっていてよく見えなかった。


「クオン?」


カルーナがもう一度呼び隣に立つ。


すると半分雲に隠れていた太陽が全部出て辺りを照らしクオンが見ていたものが何か見えた。


それを目にした瞬間カルーナは目を輝かせた。


そこには花冠の銅像があった。


花冠はここにも来て町の人達を助けていたのだ。


「紫苑さん!紫苑さん!」


先にクオンを呼びに走っていったので紫苑達はまだきていない。




「カルちゃん?大声出してどうしたんだろ?」


まだクオン達のところから少し離れている。


「……」


修羅はカルーナの声を煩いと思い顔を険しくする。


「紫苑さーん!ここに花冠の銅像がありました!」


二人はその言葉を聞いた瞬間、全力疾走で走り出す。


先についたのは修羅で少し遅れてから紫苑がきた。


紫苑は息切れが激しく肩で息をするも、花冠の銅像を見るなり目を輝かせた。


「綺麗にしよう」


汚れているのに気づき紫苑がそう言う。


皆そのつもりだったので手分けして綺麗にしていく。



「何の花がいいかな」


銅像を綺麗にし終わり何の花を添えるかで喧嘩になる。


紫苑は芝桜、カルーナはネモフィラ、クオンはコスモス、修羅はアイリスを。


全員見事に意見がわかれる。


一時間経っても誰も意見を曲げようとせず最終的にじゃんけんでどの花にするかを決める。


「よっしゃ!」


勝ったのは紫苑。


芝桜に決定した。


紫苑は満面の笑みで芝桜を辺り一面に出す。


花冠(はなかんむり)も作り、花冠(かかん)の頭の上にのせる。


山を降りる際、負けた修羅はこれでもかというくらい花を咲かせた。


町の人達はフィーラに支配された山にまた生贄を出してしまったと泣きながら後悔していたが、急に山がピンク色に変わり出ていた涙が止まり腰を抜かして叫んだ。



一体山で何が起きているんだ!





紫苑達が山から降りると町の人達は幽霊でも見たような目をする。


「あ、さっきの人」


クオンは依頼人を見つけると駆け寄りこう言った。


「魔物は倒したから、約束通り肉ちょうだいね」


「(いや、肉ちょうだいとは言っていない)」


カルーナは心の中で突っ込む。


「え、本当に倒してくれたのかい?君が?」


信じられなかった。


自分で依頼していて何だが、後ろにいる修羅が倒したのではないかと疑う。


「そうね。俺が倒したのね」


力こぶを作ってみせる。


だが服のせいでどれだけできているのかわからず、依頼人は困ったような顔で「すごいね」と言う。


「あの、旅のお方……」


老人が紫苑達に声をかける。


全員これから何を言われるのか大体想像ができた。


「魔物を倒していただき本当にありがとうございます。そして、本当に申し訳ありませんでした」


杖から手を離し地面に手をつけ謝罪をする。


町の人達も全員、紫苑達に向けて「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪する。


「顔をあげてください」


紫苑が言うと町の人達はゆっくりと顔を上げて紫苑達を見る。


「貴方達がしたことは決して許される行為ではありません。ですが、俺達は依頼を受けて納得した上で魔物退治をしに行きました。なので俺達に謝る必要はありません。貴方達が謝らなければいけない相手は他にいるはずです。勿論中には俺達みたいに納得した上でいった者達もいるでしょう。それでも彼らの死を貴方達は忘れてはいけません。魔物のせいだとしても彼らにも愛する人が愛していた人がいる。どうか、そのことを忘れずにいてください。そして、幸せに生きてください。それが、貴方達にできる唯一の罪滅ぼしです」


「はい……」


紫苑の言葉に老人は涙を流しながら約束する。


自分達が生き残るためとはいえ、これまで大勢の人をフィーラの生贄として捧げてきた。


どれだけ言い訳を並べたとしても自分達が助かるために見殺しにした。


人殺しと大して変わらない。


許されるわけはない。許していいわけがない。


それでも、紫苑はその罪を背負ってでも生きて幸せになっていいと言ってくれた。


幸せになる事を諦めていた町の人達にとってこの言葉はとても嬉しかった。


死んだ魚のような目をしていた町の人達は、少しずつ希望を取り戻したかのように目に輝きが戻っていった。




「あの、本当に手伝って貰ってもいいんですか?」


あの後お礼に何かしたいと申し出たのに、紫苑にまずは死んだ者達の墓を作ろうと言われた。


勿論全員そのつもりだったが、紫苑達の手を借りる事を申し訳なく思っていた。


「気にしないでください。俺が言ったことなんですから」


紫苑が微笑むと周りにいた人達は顔を赤らめた。


「そうですか。ありがとうございます」


男は顔を真っ赤にしながらお礼を言う。



二人のやり取りを遠くから見ていた修羅は紫苑の猫尾を被ったような普段とは違う態度と話し方に「キモッ」と無意識に口から言葉が出ていた。

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