フィーラ
「それでどうしたの?」
クオンに聞いても断片的にしか離さないので理解するのに時間がかかるのでカルーナに聞く。
「魔物退治を依頼されまして。クオンだけじゃ心配で紫苑さんも連れて行こうって話してたら、いつの間にか……」
僕を置いていって紫苑さんを迎えに行ったんです、と続けようとしてやめる。
自分で言おうとして何故か悲しくなったから。
「あー、なるほど、そういうことね」
カルーナが最後まで言わずとも何と続けようとしたのかわかったし、何で自分も一緒に連れて行こうとしたのかも。
前回魔物退治を依頼したときクオンが森の一部を平らにしてしまい町の人達を怒らせてしまった。
結局魔物を倒してもらったからと許してもらえたし報酬も貰えたが、町の人達からはさっさと出ていけと追い出された。
「わかった、一緒に行くよ」
また追い出されるのは困る。
「修羅さんも行く?」
「ああ」
暇潰しには丁度いいと思い一緒に行くことにする。
「それで、どこにいるの?」
「森にいるそうです。もう何十年も居座っていて、討伐に森に入った人達は皆帰ってこなかったそうです」
「何の魔物かな?何だと思う?」
カルーナの説明を聞いてから、森に居座る魔物が何かを考える。
「知らん。殺せばいいだけだろ」
魔物を正体が何か考えるだけ時間の無駄。
どんな魔物であろうと殺す。
それが強敵であろうと変わらない。
「まぁ、そうだけど。なるべく被害は最小限に抑えないと」
魔物の正体がわかれば戦い方は決まるし、被害も最小限にできる。
そうすれば前回の二の舞になることはない。
「まだ、あんなクズどものこと気にしているのか。魔物とも魔族とも戦ったことのない奴の言葉なんて一々気にするな。あいつらと戦って誰も死ななかった、殺させなかっただけで充分だろ。それ以上望むあいつらがクズなんだ」
あの日紫苑に止められてなければ腕の一本や二本折ってやったのに、と思い出しただけで殺意が蘇る。
「僕もそう思います。僕は魔力も無いようなものだし、強くもないから一緒に戦うことはできませんが、魔族や魔物がどれだけ強く恐ろしい存在かは知っています。皆さんがどんな想いで戦っているのかは知っています。何の被害も出さずに守ることはできないことも知っています。そんなこと少し考えれば子供ですらわかることです。自分のことしか考えられない人達のことを考える必要はないと思います。一番大事なのは命があること。そして確実に魔族と魔物を倒すことなんですから。それ以外のことは大したことではありません。命さえあればどうにでもなるんですから」
そう命さえあれば、生きてさえいれば、人は何度だって立ち上がれる。
「まぁ、そうなんだけどね」
二人の言いたいこともわかるが、後々面倒になることは避けたい。
「仕方ない。そうなったらそうなったとき考えようか」
これ以上考えても時間の無駄。
被害がでたらでたときに考える。
「はい。それがいいと思います」
昔のカルーナだったらお金の心配をして被害は最小限にするべきと紫苑の味方をしたが、いい意味で紫苑達の影響を受けはっきりと自分の意見を言えるようになった。
「ここから瘴気がすごいね。何がいるんだろうね」
「多分、フィーラだと思うのね」
紫苑の言葉にクオンが答える。
フィーラとは人間を食べないが、殺した人間の死体を森に吊るすという悪趣味な魔物だ。
そのためフィーラがいる森は瘴気が凄く誰も近寄ろうとはしない。
そして最も悪趣味なのは町の人間達に自分の趣味のために人間を連れてこさせる。
「え、それってつまり僕達生贄にされたってことですか?」
フィーラという言葉に反応する。
カルーナはピリエスのお陰でほぼ全ての魔物のことは頭に入っている。
「だろうね。まぁ、こればっかりは仕方ないけどね。魔物に殺されないためには従うしかない。彼らを責めることはできないよ」
紫苑は千年前、魔族に支配されていた日々を思い出す。
その日々を知っているからこそ町の人達を責めることはできない。
花冠に助けてもらってなかったら自分は死んでいたし、もしかしたら町の人達みたいに生贄を差し出していたかもしれない。
「殺そう」
紫苑は顔から表情がなくなり冷たい口調で言い放つ。
その声を聞いたカルーナは心臓を握り締められたみたいに息ができなくなる。
何度体験しても慣れないし怖い。
カルーナは息を整えようと木に手をつく。
ポタッ、ポタッ。
雨が降り始めたのかと思い上を見上げると死体がぶら下がっていた。
「ギャアッ!」
腰を抜かしてその場に座り込む。
「どうしたの、カルちゃん。大丈夫?」
いきなりカルーナが大声を出して驚く。
「あ、あれ……」
カルーナは死体を指差す。
三人は何だ?とカルーナの指の先に視線を向ける。
「修羅さん」
紫苑は修羅に死体を下ろすよう頼む。
修羅は木の枝に飛び乗り吊るされている糸を切り死体を助ける。
何年も吊るされていたのだろう。
体中から悪臭が匂い、皮膚は爛れていた。
それでも白骨化していなかったのはフィーラが呪いをかけていたからだろう。
フィーラの呪いのせいで肉体がある以上魂はこの世に彷徨い続けあの世にはいけない。
楽にするには焼き払うしか方法はない。
修羅は手に火を集め死体に触れ燃やす。
死体はすぐに灰となって風に飛ばされた。
「修羅さん。全部燃やして」
他の木の上を見れば死体が沢山吊るされていてどれだけフィーラが人間を殺してきたのか一目でわかる。
「……」
修羅は何も言わなかったが目を見れば怒っているのが見てわかる。
手に炎を纏わせそれを死体に向けて放つ。
炎は死体だけを燃やし、木や他のものが燃えることはなかった。




