表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年前の大魔導師の生涯を知る旅に出た人類最弱魔法使いが、気づけば他種族最強クラスと一緒に旅をすることになった件  作者: 若狭巴
鬼王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/41

依頼


「最初はどっち行こうか?」


宿から出てどっちに行って話を聞くか迷う。


いつもは紫苑が勝手に歩き出すので自分では決められない。


仕方ない、と近くにあった木の棒を立ててどっちに倒れたかで行く方向を決めようとする。


トンッ。


木の棒は右に倒れた。


「右か」


そう言って歩き出そうとすると「カル」と名を呼ばれ、声のした上を向いた瞬間クオンのお尻が目の前まできていて「(あ、これ駄目だ。ぶつかる)」と避ける暇もなく顔で受け止める。


ドンッ。


クオンのお尻とぶつかりカルーナは後ろへと倒れる。


「カルー、大丈夫か」


近くにあった木の棒でカルーナをつつく。


「……大丈夫だよ」


鼻を押さえながら起き上がる。


「急に飛びおてくるからびっくりしたよ。どうしたの?」


「暇だからついて行くのね」


「そう。ありがとう、クオン」


カルーナはすぐに護衛のために一緒に来てくれるのだとわかった。


カルーナはガーベラの服で見た目は良くなったが、それでもチンピラにはよく絡まれる。


長年、底辺で過ごしていたからか舐められやすい雰囲気が出ている。


そのため、ほぼ百パーセントと言ってもいい確率で顔の怖い人達に絡まれる。


その度に紫苑とクオンが助けてくれる。


「気にしなくていいのね」




「うーん、中々見つからないな。ここには来てないのか」


この町に花冠は来たことあるかと聞いても誰も知らないのか「ない」と答える。


三時間も聴き込みしても見つからず、本当にないのかと思いそろそろ宿に戻ろうすると「おい」と声をかけられる。


カルーナが声のした方を向くと怖い顔の人達がいて「やっぱりか」とそろそろ絡まれそうな予感がしていた。


「はい、何ですか」


「金をよこせ」


カルーナと三、四歳くらいの人間の身長しかないクオンを見ていいカモだと嬉しそうに笑いながら男達は二人に近づく。


「命だけは助けてくれ」と慌てて金を出して逃げようとすると思っていたのに、カルーナの「嫌です」ときっぱりと断る姿に唖然とした。


男達はすぐに我に帰り武器を構え「死にたいようだな」と顔を真っ赤にしてカルーナを殺そうとする。


「やりすぎちゃあ駄目だからね」


前回の事を思い出しやりすぎては駄目だと注意するが、カルーナの言葉など耳に届いていないのか容赦なく男達を殴っていく。


その光景を見てカルーナは頭を抱える。


「(誰にも見られませんように)」


周囲に人がいないことを祈る。


だが、そんなカルーナの祈りも虚しく一人の男性に見られていた。


「坊や、とても強いな」


「(ギャアッ!)」


声には出さなかったが男性に話しかけられ心臓が飛び出そうなほど驚く。


「当然なのね」


男性に褒められ気をよくしたクオンはえっへんと効果音がつきそうなくらい得意げな顔をする。


「坊やは魔物退治もできるか?」


男性はクオンが人間の子どもではないと気づいたからかそう尋ねる。


もし、人間の子供だったら魔物退治を依頼しようとは考えなかった。


「勿論なのね」


「じゃあ依頼してもいいかな」


「任せるのね」


クオンは男性と握手を交わす。


男性はクオンとカルーナに森にいる魔物退治を依頼した。


もう、何十年も森に居座っているので誰も森に入ることができないと。


何人にも魔物退治を依頼したが誰一人帰ってこなかった。


命の保証はできないが、そのかわり倒してくれたら望むものを何でも渡す、と。


あまりにもクオンにとっては簡単な内容に、本当にそんな事を言ってもいいのかと頭が痛くなる。


クオンの強さを知らないから簡単に望むものを何でも渡すと言えるのだろうが、もし肉を全部よこせ、甘いものを全部よこせ、と言ったらどうするつもりなのだろうか。


相当なお金がかかる。


カルーナ達は紫苑のお陰でお金の心配ないが、どう見ても隣町や他の町に比べて発展するどころか衰退しているように感じるこの町ではクオンを満足させるだけの肉や甘いものがあるようには見えない。


このままじゃ駄目だと思いカルーナは「紫苑さん達も誘って行こう」と提案するもあっさりと断られてしまう。


「俺一人でも大丈夫なのね」


自信満々に答えるクオンに「うん。知ってる」と思う。


「それは勿論わかってるよ。でも、クオンこの間やりすぎて町の人達困っていただろ。念の為一緒に行ってもらおう。それに紫苑さんが一緒に来てくれたら、頑張ったご褒美にお肉買ってくれるかもよ」


途中まではむぅ、とした顔をしていたが最後の言葉を聞くなり目を輝かせ「紫苑兄ちゃん!!」と大声で叫びながら走っていく。


「あ、クオン……行っちゃった」


あっという間にクオンの姿が見えなくなる。


「あ、あの……」


男性は急に走り去っていったクオンに結局受けてくれるのかわからず困惑する。


「あ、すみません。魔物退治はきちんとしますので」


「本当ですか。ありがとうございます」


男性は頭を下げお礼を言うと、では後でと言ってすぐにこの場から離れていく。


何故か申し訳なさそうな顔をしていたので不審に思うも、すぐに命の危険があるかもしれない依頼をしたからだと思い深くは考えなかった。


 

カルーナも宿に戻り、今頃無理矢理森に行かされそうになっているであろう紫苑のところへと向かう。




「紫苑さん」


宿から少し離れたところでカルーナに引きづられるようにして連れていかれている紫苑を見つける。


「カ、カルちゃん。いいところに。助けて」


何も事情を説明せずに宿から無理矢理連れてこられたのだろう。


「クオン。紫苑さんにちゃんと説明した?」


クオンに止まるように言ってから質問する。


「あ、忘れてたのね。ごめんなさいなのね」


「いいよ。とりあえず降ろして」


自分で歩くからと。


クオンは降ろしてと言われてパッと手を離す。


「イッ!」


言ってすぐに離されるとは思っておらず、頭を地面にぶつける。


「(うわぁ、痛そう)」


自分がもし紫苑のたちばたと想像しただけで全身に悪寒が走りブルっと体を震わす。


「大丈夫ですか?」


カルーナの言葉に「うん、まあ、なんとかね」と顎を摩りながら立ち上がる。


「いいざまだな」


修羅は馬鹿にしたように笑う。


クオンが紫苑を宿から無理矢理連れ出したときから、何かあったのかと心配でついてきたが面白い姿を見れてつい笑ってしまう。


「笑う前に助けてくれてもよくない」


「……何でだ?」


これでもかと間を取ってから言う。


「……期待した俺が馬鹿だった」


これ以上話しても無駄だと思い切り上げる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ