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千年前の大魔導師の生涯を知る旅に出た人類最弱魔法使いが、気づけば他種族最強クラスと一緒に旅をすることになった件  作者: 若狭巴
九尾

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ヴァイオレット

「で、貴方達は一体何者?どうして花冠様のことを知りたがるの?」


声が震えそうになるのを必死にたえ、何とか厳しい口調で問う。


人通りが少ないところに連れていかれ急に怖くなる。


見た感じでは悪い人には見えないが、人は見た目では判断できない。


女の子はそのことを痛いほど知っている。


「ああ、そういえば自己紹介がまだだったね。俺は紫苑。こっちは……」


「カルーナです」


「で、君は?」


紫苑が女の子に尋ねる。


「何で私が貴方達に名前を教えないといけないのよ!貴方達どこからどう見ても怪しいし!何かしたら、周りの人に助けを求めるんだから!」


相当気は強いが、足はガクガクと小鹿のように震えている。


「(確かに、僕達結構怪しいかも)」


女の子に指摘され、はじめて自分達が他の人から見たら怪しいかもしれないと思う。


紫苑は見た目も美しく、着ている服も高価なもの。


逆にカルーナは見た目は下の下の下で凡人の中の更に下、着ている服はボロボロ。


そんな二人が一緒にいたら誰がどう見ても怪しい。


この町に来る前、汽車に乗っているときから人に見られていると知っていたが、それは紫苑が美しいからだと思っていた。


だが、もしかしたらそれだけが理由ではないのかもしれないとようやく気づく。


「まぁ、君から見たら俺達は怪しいのかもしれない。でもね……俺が強そうに見える」


紫苑は力こぶをつくる。


服の上からでもわかる。


全く筋肉がないことに……。


「うん、まぁ、確かに怪しいけど……倒せそうね」


二人を見て勝てそうな気がする。


どこからどう見ても怪しいが、紫苑の一言で大丈夫な気がしてきた。


「うん、じゃあ、話を元に戻すね。君の名は?」


チョロいな、と思い人の良さそうな笑みを浮かべ話しを戻す。


「私はヴァイオレット。ヴァイオレット・ウォーカーよ」


「(性があるということは貴族か)」


服装は庶民だが、髪は綺麗、手は銅像を毎日磨いているからか普通の貴族令嬢よりは綺麗ではないが平民よりは綺麗。


一目見ただけでは平民と間違うかもしれないが、よく見れば違うとわかる。


「そう、ではヴァイオレット。君に聞きたいことがあるんだ」


「何?花冠様のこと?何で?どうして知りたいの?」


「ただ純粋にどういう人生だったのか知りたいだけ」


紫苑のその声は酷く悲しげで、ヴァイオレットは花冠と知り合いだったのかと疑ってしまう。


そんなはずはないと首を横に振り否定する。


どこからどう見ても二十代半ば。


千年前に生きていた大魔導師と知り合いになれるはずはない。


「貴方は?」


これ以上紫苑の方を向いていたら何でも話してしまいそうになりそうで、それを誤魔化すようにカルーナに話しかける。


「俺は本を出そうと思っているんです」


カルーナの言葉にこいつもか、と心の中で悪態をつく。


花冠のことを書いた本はこの世沢山ある。


つい最近も出た。


中身の薄っぺらい本が。


大して調べもせず殆どの人が知っている内容を書いて名を売ろうとするクズ。


この男もそいつらと同類かと思うと、一瞬でも話してもいいと思った自分を殴りたくなる。


ヴァイオレットは話すことは何もないと断ろうとうとするが、カルーナが続きを話だしその内容に耳を傾けてしまう。


「世界中を旅して花冠がしたこと、そしてその後どう変わったのか。もう花冠が亡くなって千年も経っているから、その当時のことを知る者は誰もいないので全てを知ることは難しいと思います。でも、中には自分の子に話している人もいると思うです。その人達から話を聞いて、僕はこの世界中の人に花冠の生涯を知ってもらいたいんです。魔王を倒し世界を救っただけでなく、何をしたのかを正しく知ってほしいです。今の僕達がこうして生きていられるのは花冠のお陰です。僕達は花冠のことを知って感謝して毎日生きていかないといけないと思うです」

 

ヴァイオレットの目を逸らすことなく真っ直ぐ見つめる。


「……ついてきて」


暫く考え込んでいたが、パッと顔を上げカルーナの顔を見て言う。


二人は黙ってヴァイオレットの後を追う。


何も言われなかったが、花冠のことを教えてくれるのだと紫苑は何となく察した。




「……ここは?」


貴族の家のようなところに連れてこられカルーナはまさか、と嫌な予感がする。


カルーナはヴァイオレットのことを貴族令嬢だと気づいていない為、何故ここに連れてこられたのか理解できていない。


「私の家よ」


「私の家?」


カルーナはヴァイオレットと家を交互に見て、暫くすると奇声を発した。


「どうして俺達をここに?」


その理由はわかっていたが、カルーナがわかっていないのでヴァイオレットの口から言わせようとする。


「花冠様のことが知りたいのでしょう?なら、私より祖母から聞いたほうがいいわ。祖母の方が私より詳しいから」


ほら入るよ、と家の中に入っていく。


家の中に入ると使用人達がヴァイオレットに「お帰りなさいませ、お嬢様」と声をかける。


ヴァイオレットは適当に返事をすると祖母はどこにいるかを尋ね、場所がわかると二人についてくるよう手招きをする。


長い廊下を渡り庭に出て更に歩くと小さな家がある。


ヴァイオレットは扉を叩き「お祖母様、私です。入ってもいいですか」と聞く。


中から「ええ、どうぞ」と返事をもらうと扉を開けて中に入る。


二人もその後に続いて中に入る。


「ヴァイオレット、今日の仕事はもう終わったの?なら、今日も……そちらの方々は?」


知らない男がいるのに大して驚いた様子もなく淡々と尋ねる。


「こっちはシオンさんで、こっちがカルーナさん。で、こちらは私の祖母のシラー」


ヴァイオレットが両方に名を教える。


「この二人、花冠様のことが知りたいみたいなの。お祖母様、この二人に千年前花冠様が何をしたのか教えてあげて欲しいの」


ヴァイオレットの口からまさかの頼み事にシラーは両目をこれでもかと見開く。


信じられなかった。


花冠のことを知りたいという人はこれまで沢山訪ねてきたが、全員追い返し二度とくるなと石まで投げて追い払っていたのに……。


どうして今回は教えることにしたのか。


いや、それよりもヴァイオレットをどう説得したのかの方が気になった。


「別に構わないけど、理由を聞いても」


シラーがそう言うと、ヴァイオレットはカルーナを見てさっき言ったことを言うように視線で促す。


カルーナヴァイオレットの意図に気づき頷くとさっき言ったことを目を逸らすことなくもう一度言う。

 

「……そういうことね。わかったわ。教えましょう。千年前の出来事を」

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