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ラプトル(猛禽)の爪   作者: 祥々奈々
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魔の黒鳥 ディアボロス 2

「嫌な感じがする・・・」

 ローズはコントロールへの報告を終えるときびすを返して運河上空まで最高速度で戻ってきたのだ。

 「お嬢様 、どこにおられるのですか ! お嬢様」

 低空で飛行しているのであろうリオ機との衝突を避けるため高度を500メートル近くまで下げて下方向に目を凝らす。

 ビイィィィィ

 高度識別信号が警報けいほうを鳴らす、2時方向の山影からリオ機が上昇機動からハーフロール、機体を反転させようとしているようだ、だが速度が足りていない。

 「インメルマルターン ・・・地上攻撃 ? 」 

一気にローズに緊張きんちょうが走る。

 ターン途中のリオ機をめがけて下方より巨大な弾丸が突き上がってくる。

 リオは気づいていない!?

 「 いけない !! お嬢様 」

ローズは弾丸の進行予測位置に向けて突進する。


 インメルマルターンのロールを終えて射線位置に向かおうとしたリオの目に、正面から猛烈もうれつなスピードで突き上がる黒点が見えた。

 「! 」

相対速度は時速500キロメートルを超えているだろう。

 「なんて上昇力!」

 正面から突っ込んでくる、チキンレースを挑んできたのだ。

 ブチンッ リオの何かがキレた!

 「生意気っ ! 」

 リオの浅慮せきりよな面が顔をのぞかせた。

 12.7ミリ機銃の引き金に指をかけ力任せに押した。

 ドドドトドドド・・・連続して吐き出される弾丸、目標からは遠く飛び去る。

 正対する動く目標に対してはそうそう当たらない、ましてディアボロスは横方向ではなく上下に揺れながら飛翔している、弾道が見えているのか。

 連続射撃6秒100発を打ち出したところで ガツンッ 何かがれる音がした。

 12.7ミリ ホ-103機銃が左右どちらも沈黙した。

「うそっ!?」

 残弾はまだあるのに停止した理由は弾倉のトラブルか ?

 両者の距離が一気に詰まる。

 ディアボロスがその巨大な翼を広げホバリングする。

 「自爆するつもりなの !? 」

 「まずいっ!」

 ゲームではない、正面から相対そうたいして衝突すれば掠っても致命傷だ、上方では間に合わない、操縦桿そうじゅうかんを倒してディアボロスの下を潜る。

 ディアボロスの表情のないはずの赤錆あかさびの目が嗤う。

 下を潜ろうとする1式戦に向かい、閉じられた鍵爪かぎつめを開く、そこには飛び立つ時にんできたのだろう石榑があった。

 時速300キロメートル以上で飛ぶリオの前にいしくれとなって衝突しょうとつする。

 ガキャッア

「ツッああっ!!」

 ビシッ

 キャノピーがくだけ散り、ガラスの破片が高速でリオを襲う。

 「クソォッ」

 ゴーグルが目の代わりに死んでくれた、強化ガラスで出来たゴーグルでなければ即死だったろう。

 ほほが血で温かい、どこか裂傷れっしょうしたのか、痛みがないのは傷が深い証拠だ。

 ブォンブォンブォン

 3枚翅まいはねプロペラの異音がさらに追い打ちをかける。

 石礫いしくれがプロペラのピッチに損傷を与えたのだ、繊細な角度で計算され作られているプロペラの変形は致命的だ。

 バキィッン 3枚翅のうち1枚が途中から折れて吹き飛ぶ。

 リオの1式戦はみるみる高度と速度を落としていく。

 「これはッ!まずいことになっちまった」

 機銃という爪と速度、高所という絶対的有利の3条件を全て失い、今推力もなくなりつつある。

 これは絶対絶命というやつだ。

 「んだな、クソッ」

 奴を舐めすぎていた、もっと慎重に攻撃すべきであり、自分の過失だった。

 弱々しく藻掻もがくトンボの頭上から勝ち誇ったように悠々と大翼を広げロケットカタパルトを生み出す巨大な爪が迫った。

 なかばあきらほうけたように見上げたリオの蜘蛛くもの巣だらけのゴーグルのわずかな視界に垣間見かいまみえたのは血飛沫ちしぶき

 ドッドドン  ローズ機から放たれた12.7ミリ機銃の1連射が正確無比にディアボロスの頭部に着弾、と同時に首から上を消失させた。

 なんという射撃精度。

糸の切れた人形のように悪魔の巨鳥が落ちていく様を唖然あぜんとして見送るリオの頭上をローズの1式戦が横切る。

 「お嬢様 ! 無事ですかっ」

 あの細い体のどこから出るのだろう、こんな大声が。

 「……」

あまりの安堵あんどと自分の浅慮が招いた結果、恥ずかしさで声がふるえるのをローズに悟られそうですぐの返答が躊躇ためらわわれた。

 レシーバーに入らないよう俯きながら小さく深呼吸する。

 「お嬢様!」

 次でスピーカーと鼓膜こまくが壊れる。

 「ローズ姉、ごめん……私は、だいたい大丈夫」

 少し、声が震えた。

 「 ああっ、お嬢様、良かった、間に合った……かみさま」

 きっとローズの瞳から涙が落ちている、申し訳なさすぎて消え入りたくなる。

 ローズ機がガクガク震えながらなんとか飛行姿勢を保つリオ機の横につき、キャノピーの砕けたこちらを覗き込む。

 「お嬢様!顔から血が……」

 「キャノピーの破片が跳ね回ったの、たいしたことないわ」

 「基地まで帰れそうですか」

 「無理かも、運河に着水させるしかないと思う」

  そうしているうちにも振動は益々大きくなっている、横から見ているローズにもはっきりと分かる程に。

 「お嬢様、河川中央から岸に向けてアプローチして、ギアを出さずに水面に降ろしてください、すぐに救助隊が来ます」

 水面への不時着などやったことはないが、泳ぎは得意だ。

「あー、きっと帰ったらリリィ姉に死ぬほど叱られるだろうな、まいったな」

 「大丈夫ですよ、私も一緒です」

 「ローズ姉は全然悪くない、私がバカなだけだ」

 「バカだなどと、リリィはそんなこと申しません、なにより無事を喜んでくれます」

 これ以上プロペラが損傷すればきりもみ状態で墜落する、愛機を捨てる覚悟を決めて、

水面に胴体着陸するため燃料コックを閉めてエンジンをストールさせ滑空状態でアプローチする。

 ベタ凪の水面、流れも速くない、着水は難しくないだろうが愛機を失うのはつらい。

 「ごめんな」

 リオは愛機に詫びた、自分のおごりが全てだった、自分の責で誰かを犠牲にするのは手足をがれる様に辛い。

 リオは時速60キロメートルで着水、衝撃、機体は2度3度水面をバウンドして浮上したまま止まる。

 沈むまで数分あるだろう、無線はまだ生きているようだ。

 「お嬢様、見事な着陸でした、付近に脅威きょういはありますか ? 」

 上空を旋回しながら心配そうに声をかけてきた。

 人かディアボロスにやられたのだろうケツァル達の死体が散らばっている、動いているものは見当たらない。

 岸まで50メートル程度、水温は低く流れは速そうだが泳いで渡れないことはない。

 「 脅威は見えない、いけるわ 」

その時になって首に巻いたバンダナが真っ赤になっているのに気が付いた、ほぼけてピンク色の肉が見えている、ギョッとしてさわろうとしたのを思いとどまり、座席裏の救急箱から医療用テープを取り出し急いで張り付けた。

 若干じゅっかんの防水にはなるだろう、傷跡が残るのはかまわないが感染は怖い。

 機体の浸水が進み浮力を失ってきた、ひざ下まで冷水にかっている。


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