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ラプトル(猛禽)の爪   作者: 祥々奈々
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異世界×麻薬×覚醒者×戦闘機×神獣×魔の黒鳥

前半6話位まではレシプロ戦闘機格闘戦になります。

( リーベン年号553年)


 高度5千メートル 時速300キロメートル 雲が厚く地上は見えない 終わりのない超山脈が広がる。    

どのいただきはるか成層圏せいそうけんに達しその先端は20000メートルを超え、そこからの景色はだれも見たことがない。

 1式戦2型ハヤブサ 2機が哨戒任務しょうかいにんむのため峡谷内を飛行していた。

  尾翼の小隊旗マークに描かれるのは猛禽ラプトルの顔と羽根。


 「R293コントロール こちらオスカー1 ・2 これより侵入する」

 「コントロールよりオスカー1・2 感度明瞭、峡谷北壁の下降風が強い、峡谷中央を維持して侵入せよ」


 「お嬢、先に侵入します」

 機体に赤ラインを塗られたレッドバロン(エース)を駆る僚機ローター少尉が先行していく。

 「了解、任せる」

 リオ大尉はスロットルをやや絞り高度を上げながら僚機りょうきとの距離を確保する。

 

 超山脈と都市をへだてるてる巨大なダム湖が雲の隙間から見える、峡谷の間隔は1000メートルあるが直線ではない、旋回ポイントが遅れれば山脈に激突、命はない。

 危険な任務だが峡谷の開発やダム湖を使用した物流の維持、神出鬼没に襲ってくる翼竜や敵性国家の偵察機どもを追い払うのには絶対必要なことだった。


 峡谷に入ると雲が晴れて深い谷底が見える、星形14気筒のエンジンが峡谷に木霊する。

 旋回ポイントが近づく、ローター少尉の赤い機体がバンクする、ギラリと光った瞬間、鋭く正確に航 《こうろ》路を寸分たがわずトレース、見事な操縦、さすが覚醒者だ。


 峡谷を進むと山脈に遮られて通信電波は届かない、何年もかけて設置してきたビーコン

派を利用した簡易的な2次元ナビと自分の記憶が頼りだ。

 タイトロープを30kmほど進んだところで5000メートルのさらに上空から巨大な弾丸が急降下してくるのをリオは捉えた !


 「ディアボロス ! ! ローター小尉、正面20カーブ、高度2500におびき出す、右から迎撃して ! 」

言うと同時に機体を右旋回降下せんかいこうか、垂直に切り立つ岩肌を舐めるように速度を保ちながら螺旋らせんを描いて、ディアボロスを引き付ける、ここで速度を上げると振り切ってしまう。

「お嬢 ! ! 」ローター機は右旋回上昇する。

降下するリオの後に迫る円錐状に翼をたたみ時速300キロメートル以上の降下速度で猛追してくるディアボロスが見える。

 「 お嬢 、でかいやつだ!」

魔の黒鳥、最大最恐最速、3年前のバナマ運河襲撃事件からの宿敵。

完全な側面飛行をしながら複雑な山肌を縫う、飛び出た岩を避けて飛ぶ、細かな石が機体を打ち付ける音がコクピット内に響く、全身が総毛たつ。


まるでゴムで出来た柔軟なミサイルのような魔鳥ディアボロス、ローター少尉が(お嬢)と呼ぶリオ・アイゼン機の真上に迫る。

その嘴は巨大な槍、鋭い影がリオ機のキャノピーに伸びる寸前にプロペラのピッチコントロールを操作しディスキングブレーキ、自動空戦フラップ動作。

ゴアッ 推力を発生させていたプロペラのピッチング角を変化させ、一枚の盾を機首に作り出す。

空中での急ブレーキ、巨大な大気の神が機体をわしづかみにする、リオの身体だけをシートから引き剝がそとする、視界が狭まる、減速Gによるレッドアウト。


ディアボロスの前で突然とんぼが十字架になり、自分の腹下を潜る。

機首を上げて失速寸前で後方に1回転、クルビット機動と呼ばれる高等技術だ。

弾丸となっていたディアボロスが翼を広げ急停止、追い越した獲物を振り返った、そこは谷の中央、魔の黒鳥ディアボロスは誘い出されたことに気づくが時すでに遅い。

「 今 ! 」リオが叫ぶ。

「いただきっ」

ドドドドンッ 右斜め上方、絶好の位置より待ち構えたローター機の12.7ミリ機銃が火を噴く。

 翼間18メートルの巨体の中央に着弾、マ弾と呼ばれる新開発の空気圧縮信管炸裂弾が究極の飛行生物を内側から切り裂いた、断末魔の咆哮ほうこうを上げながら峡谷の深くに落ちていく。

 だがクルビット機動は戦闘中に生命線ともいえる速度を失う、単騎であれば自殺行為だ、交差時の一撃を僚機りょうきが外せば速度を失った機体は簡単に引き裂かれる。

 僚機への絶対の信頼がなければ出来ない。


 失速状態に陥ったリオの1式戦も機首を下げながら高度を落としていた、一度落ちた推力はすぐには戻らない、峡谷の乱気流に翻弄される。

 谷底が迫ってくる「くっ・・」ピッチを戻しスロットル全開、もどかしいほどに鈍いエンジン、機体が水平飛行を戻したとき樹木の先端を機体の腹が擦る。

 「 ! ! お嬢っ」

 ギュワァァァ・・・・ガオォォー

 ハ115星形14気筒が目覚める、峡谷の壁に沿って機体を斜めに滑らせながら水面に出ると水飛沫をあげながら水平飛行を取り戻し一機に上昇、ローター機の横にまで高度を戻した。


 「お嬢、無茶が過ぎますよ、この狭い場所でクルビットなんて聞いたことありませんよ」

 ローター少尉が驚嘆かんたん交じりの呆れた声がイヤホォンから聞こえる。

 「・・・まだローズ姉みたいには出来ないわ、でも、まあ、なんとかなったわ」

 「なんとかって、こっちの肝が冷えましたよ、なんかあったら自分がリリィ少尉に殺されちまいます」

「大丈夫よ、黙っているから」

 ガ・・ガガ通信機から雑音が漏れると同時に

 「聞いていますよ、お嬢様!!」

 管制からの通信が聞こえてきた、声の主は開発室のリリィ・イワン少尉だ。

 「あっ、あれぇ、リリィ姉今日は休日のはずじゃ・・・」

身長185センチの大女が悪戯いたずらを見つかった子供のように驚く。

「お嬢、僕は知りませんからね」

火の粉を避けるため離脱にかかる子羊

  「お嬢様が出撃の時に私が居ないことなどありえません ! クルビットとか聞こえましたが、またそんな無茶をして、もしもの事があったら私はローズになんと詫びればよろしいのかお考え下さい、お嬢様」

 隻眼眼帯の美少女が白い頬を紅潮させ、最後の方はうっすら涙声だ。

 まるで戦国の武士のような言葉回し、外見とのギャップと周囲は唖然あぜんとなるが本人は全く意に介さない。

 「いや、これは・・そうそう、ローター少尉と事前に作戦を立てて練習していてだな」

 ピクッ、美しい眉が跳ね上がると同時にアーモンド形の隻眼せきがんがスウッと細くなる。

 「 ・・・ロォ-タ―・・・コロス」

 地獄から響く閻魔えんまの声。

 「ひぃ、そんな、お嬢 ひどいです」

 怯える子羊

 「目標転嫁成功」

 薄ら笑う悪徳商人

 「ローター少尉、降りたらその首もらい受けるとしよう ! 覚悟しておけ」

 閻魔の沙汰は下された。


読了いただきありがとうございました、次話もよろしく願いいたします。

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