表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】ぶたぶたこぶたの令嬢物語~幽閉生活目指しますので、断罪してください殿下!【長編連載版】  作者: 杜間とまと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/99

そばに……

 私、生きて戻れるのかな。

 誰か、見つけてくれるのかな。

 今、何時だろう。暗くなる前に風雨をしのげる場所を探さなくちゃ。

 のろのろと立ち上がる。

 馬車に戻ったほうがいいのかな……どうしようか。

 なんとか大きな木のうろを見つけてそこに小さくなて眠った。

 もう、とっくにカンテラに使うろうそくは使い切ってしまっている。

 月明かり……今日は暗いな……。

 怖い。ううん、大丈夫。今までだって危険や獣は出なかったんだもん。

 だけど。

 一人は……怖い……。


 次の日。不自然な格好で寝ていたため体がギシギシする。

 立ち上がって、軽く体を動かしてから歩き始める。

「おかしいな……無人島生活どころか、これ、遭難じゃないかな……」

 どっちに向かえばいいのか分からない。

 いつ、どこから間違ってしまったのかな……。足が痛い。足場の悪い道を長距離歩いたからだろうか。何度か挫いたし、足の裏がジンジンする。脹脛も筋肉痛になっている。

 ああ、喉が渇いてきた。

 また、水をさがさないと……。

 ぽつりと、頬を水滴が濡らす。

「雨?」

 雨が降ってきた。

「水を探す手間がはぶけた」

 鍋を道に置くと、雨宿りするために木陰に避難。膝を抱えて雨が止むのを待つ。

 がくがくと、足が震えている。いや、体が震えている。

 少し、雨に濡れたからかな。

 寒いなぁ。そうだ、火を起して温まれば……。

 ううん、駄目、雨でなにもかも湿ってしまった。枝も枯葉も……火がつけられない。どうしよう。

 寒い……。

 やっぱり、馬車に戻ろう。雨が止んだら……。目印は大丈夫だろうか。雨で流されてないかな。

 ザーッと降り続く雨が止むのを、震える体を抱きしめてじっと見ている。雨は激しさを増していく。

 あ、鍋に水が溜まったみたい。

 水を、飲まないと。立ち上がると、そのままふらついて地面に倒れこんだ。

 バシャリと泥水が跳ね、顔が泥に汚れる。

「ああ、風呂にもはいれないのに……」

 立ち上がらないと。

 人はわずか十センチの水でも溺死しちゃうんだ。水たまりに顔を付けただけでも死ぬ可能性はある……。

 水を飲まなくちゃ……。雨宿り……。馬車に戻って……。

 体が思うように動かない。立ち上がることもできない。

「う……うう……」

 雨なのか泥水かのか、涙なのか。顔がぐちゃぐちゃだ。

 このまま、私、死ぬのかな。

 やだ。

 助けて。死にたくないよ……。

 ううん、たとえ死んだとしても……こんな死に方いやだよ。

 会いたいよ、最後に。

 お父様とイーグルの顔が浮かぶ。

 お父様を悲しませたくない。

 イーグルは家族をまた失ったら傷つくだろう。傷つけたくないよ。

 それから、殿下の顔が浮かんだ。

 殿下……パンの試食のときに意地悪してごめんなさい。サンドイッチの試作品は、今度は一番に食べてもらうから……。

 ラミア、アンナ、リドルフト、レッド……どうか、責任を感じないで。幸せになって。

「寒い……」

 ろくに食べてないから体温を保つためのエネルギーが足りないんだ……。このまま雨に打たれてたら低体温で死んじゃうかな。

 それとも風邪をひいて高熱で死んじゃうかな。

 動けなくなればどちらにしてもいずれは餓死。水分取れずに熱中症という線も……。

 寒いよ、怖いよ……。

 やだ、死にたくない。

 殿下……。

 教室隣で密着されたときは温かかったな。なんで、今は隣にいてくれないの? 

 寒いよ……温めて……よ……。

 ヒロインが現れるまでは……私の隣にいてくれてもいいでしょ? 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ