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【書籍化】ぶたぶたこぶたの令嬢物語~幽閉生活目指しますので、断罪してください殿下!【長編連載版】  作者: 杜間とまと


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キャンプ?

 すぐに夜が訪れる。

 残されたのは、私と、車輪が外れて傾いた馬車だ。

 とりあえず、馬車の中に入る。

「風雨がしのげるのは助かったわ。寝るにはちょっと堅そうな椅子だけど、土の上よりはましかしら? クッションくらい入れといて欲しかったわね」

 ジョージは本当に馬鹿だわ。

 いくら、雨で道がふさがって通れなくなったとしてもよ、私が行方不明になったら、探すでしょう。

 お父様がきっと、国中探し回ってくれるわ。

 公爵家が動かせる私兵の数を知らないのかしら? 

 学園で目撃から、馬車で連れ去られたことなんてすぐにわかるでしょうし。

 ……分かるわよね? 

 今日に限ってラミアもアンナも伴わず、独りで校内を歩いていた。

 連れていかれたのは人気のない下級貴族用の馬車停留所。あの男はどこの誰ともわからない。

 馬車はどこにでもありそうな特徴のない馬車。

「ま、すぐには見つけてもらえないかもしれないわねぇ」

 少し大きな道まで歩いて出てみようかしら? 

 でも、ジョージの言っていたことが本当なら、地図を持たなければ迷いやすいと言っていた。脇道もたくさん見たし。山で遭難したときは動き回らない方がいいと聞いたこともある。あ、それは迷子になった時だっけ? 

「まぁ、三日か四日は野宿を覚悟した方がいいかしらねぇ……」

 獣に襲われるといっても、恐れるべきなのは熊くらいじゃない? 馬車の中にいれば野犬に襲われることはないだろうし。

 それに。

 椅子の上にのせてあるバスケットの中を覗き込む。

「食料はある。水も、ところてんの水分量は九割近いというから水代わりになるはず」

 ダイエット食とはいえ、カロリーゼロというわけではないのだ。

 オートミールのモッフル風せんべい。栄養もあるよ。おやつ代わりに食べることもできるし、日持ちもするからとラミアに渡そうとしたものがたくさん。

 食料があって、風雨もしのげて、とりあえず危険もない。

 これって、いわゆる……。

「夢の引きこもり生活!」

 ひゃほーい。暫く好きなだけ寝て、学校にもいかず、誰にも邪魔されず生活できるじゃん。

 ちょっと退屈しちゃいそうだけど、大丈夫。私には黒板とチョークがある。落書きして遊ぶこともできるよ。

「あ、完全に日が暮れる前に馬車の家探ししておこう」

 馬車には、座席の下が収納になっている。ガサガサしたら、古くてボロボロの毛皮が出てきた。防寒用なのか、もともとクッション変わりにしていたのか分からないけれど。板に直に座るよりはおしりに優しい。

 それからカンテラとろうそくと火打石。

 夜間馬車を走らせるときに、ぶら下げるためのものがしまわれていた。

「あら、火打石があれば火が起こせる? これは、引きこもり生活というよりはキャンプ。この馬車はキャンピングカー?」

 

 四日目。

 さすがにそろそろ見つけてくれると思うんだけどな。

 ジョージが怪しいなんてすぐに分かるだろうし。ジョージなら「フローレンがいなくなれば元通りだろう、ラミア、フローレンはもういないんだ!」とか自分が犯人ですってゲロしてるようなこと言い出しそうだし。

 ……でも、私が生きていたら不都合だからと、死ぬのを待って黙っている可能性はあるわね? 

 本当に馬鹿そうだったから。生きていたほうが罪が軽くなると言うのに、私を排除するということに固執するあまり脳みそ働かなさそうだし。

 となると、まだ発見までかかるかもしれない。

 バスケットの中を覗き込む。

「モッフルは節約して食べればあと三日は大丈夫そうだけれど……ところてんでの水分補給は限界みたいね」

 水を手に入れなくちゃ。

 ところてんを入れていたのが小鍋だったのがラッキーだったわ。これなら水を沸騰させて消毒もできる。

 あとは、泥臭くない綺麗な水が手に入るかどうかね。

 馬車から離れて戻ってこられなくなるといけない。

 せいふくのスカーフをほどいて、細かく切り刻む。

 赤いスカーフだ。木に結び付けてすすめば、馬車に戻れなくなることはないはず。

 森の中へと足を踏み入れる。

「あー、キャンプ生活から、これじゃあ無人島サバイバル生活突入だわ……」

 そろそろ甘い物も食べたいな。木の実とかないかな。と、きょろきょろしながら森の中を進んでいくと、ふにっと変な感触があしおとからする。

「何を踏んだのっ!」

 慌てて足を退けると、地面が少し膨らんでいる。

 もしや、これは? 

 周りにかぶっている木の葉や土をどかすと、きのこが現れた。


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