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同士!ではない?!

 うん、知ってるよ。言動の一つ一つが自分のメリットを考えて口にする男だってことはね。ある時ヒロインに「いつも本心を口にできないのは辛くないですか? ……私には本当のあなたの言葉を聞かせてください。愚痴でもなんでも聞きますよ」とかなんとか言われて攻略されちゃうんだったっけ? 

 さて、この言葉の裏……は。

「私と結婚することで、将来宰相の地位は確約されたものになると思っていらっしゃいます?」

 イーグルたんはうちの子だけど、父の実子ではない点でマイナス評価。逆に父の実子である私と結婚すればリドルフトのプラス評価になる。

「随分はっきり言ったね。殿下が言う通りだ」

 殿下が言う通り? ぬぅ、私のこと周りになんか言いふらしてるの? まさか、奪われたハンバーガーを奪い返して大口広げて三口で食べたとか言いふらしてないわよね? 

「じゃあ、僕も本心で語らせてもらうよ」

 あれ? ヒロインに言われて本心を漏らすんじゃないの? 今ここで、本心? いや、これも、本心という名のでたらめ? あれ? どっち? 

「宰相になりたいとは思ってないんだ。正直、あんな大変な仕事はごめんだよ。いや、ドゥマルク公爵は本当に立派だよ」

 そう。お父様はブラック企業勤務並みの過酷な労働をしている。

 リドルフトの言うようの本当に立派だよ。

 そのうえで、ちゃんと私やイーグルたんと過ごす時間も捻出してくれてるんだもん。

 まぁ、私たちが領地に行ってる時には「会いたい、会いたい、会いたい、会いたい、会いたい」と紙にびっちり書き込まれた手紙が届いた時にはちょっと引いたけど。

 馬車で片道一日ちょっとの距離の領地だけれど、往復するだけで三日はかかる。宰相ともなると三日も仕事を休むことは並大抵のことでは実現できないようで三か月に一度くらいしか領地に戻ってこられなかった。

 領地運営は、領地を任されている者が行っているんだけど、領主であるお父様の裁量が必要なことも多くて、領地と王都を行ったり来たりしてたな。

 ……思えば使用人たちにとってもブラック。お父様、宰相辞めたいって会うたびに言ってた気がするけど……。自慢じゃないけれど、お父様は優秀。無能な宰相に変わって国が荒れるなんてぞっとするので「宰相しているお父様かっいい、そうよね、イーグル!」「はい。僕もお父様のようなカッコいい宰相を目指そうと思います」作戦決行したったわ。

 泣いてたけど、あれはカッコいいと言って喜んでいたのか、宰相をやめられなくて悲しかったのか、どっちの涙だろうね? 

「宰相にも大蔵相にもならなかったとしたら、何をするつもりなのでしょうか?」

 利益追求型リドルフトが、王家を除いて最大の権力を持てる役職を捨ててまで何をするというのか? 

「できれば、のんびりぼんやり空でも眺めていい天気だなとボーっとしていたいけれどね」

 は? 

「部屋にこもって読書もいいなぁ。美味しい物を食べて、昼寝をして」

 思わず素っ頓狂な声も出るってもんですよ。

「はぁ~? 意味が分かりませんわ!」

 攻略対象の一人。計算高くて自分の利益になることばかりを考えているキャラの本心が……! 

 分かりすぎる! 同士よ! おお、まさか、こんなところに同士が! 引きこもり願望を持つ仲間がいようとは! 

「ふふ、冗談だよ」

 なんですって? 冗談? 

「公爵家の嫡男として生まれたからには、貴族としての役割は果たすつもりではいるよ。だが、それが僕にとっては宰相職だとか大蔵相職だとか、国の要職につくことじゃないってだけだよ」

「何をなさりたいのでしょう?」

「うん、やっぱり領地を豊かにしたい。国よりもまず領地運営に力を入れたいんだ。灯台下暗しじゃないけれど、国の仕事に忙殺されて領地をおざなりにしたくはない。もちろん、今も問題なく領地運営はされているけれど、もっと発展させたいんだよ。王都と並ぶ場所に領都がなるといいと思っている」

 なるほど。

 領地に王都のような場所があれば確かに、わざわざ王都に足を運ぶ必要もないものね。

 地方貴族が王都に憧れたり足を運ぶ理由の一つは貴族同士の交流だけれど、実際は物流の問題が大きいもんね。

 多くの人が住む場所だから、物も集まる。そこに競争が生まれるので珍しい物を扱う人も出てくる。ますますいろいろな物が手に入るようになる。そして新しい物の情報も王都に勝る場所はなくなるわけだ。

 ドレスも宝石も美味しい物も、お酒も、娯楽も……。

 本は運べる娯楽だからね。私は王都には興味なし。

「領地が豊かになれば、国に治める税の額も上がるからね。周りめぐって国を豊かにすることにもつながる。そして、考えたくはないが、有事……戦争で王都が占拠されたときの第二の拠点ともなれる場所があれば隣国も攻めにくくなるだろうしね」

 うっ、わぁー! 全然ちゃんと考えてた! 

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