話題沸騰?
「少し片栗粉を使っておりますので、食べ過ぎると駄目ですわ」
まぁパン一個と同じカロリーを摂取しようとするとモッフル五〇枚くらい食べないといけないんでパンよりはましですが。
昼食が終わっても、ラミアは戻ってこなかった。
話し合いが難航したのか、それともジョージと仲良くなって離れられなかったのか。
授業開始ギリギリに教室に戻っても、ラミアの姿はなかった。ジョージの姿もない。
「どうしたのかしら?」
首をかしげていると、ジョージの浮気相手の令嬢が嬉しそうな顔をして一人で座っていた。
「ジョージ様はご一緒ではありませんの?」
令嬢はくふふとこらえきれない喜びを漏らしながら答える。
「ええ、ジョージはラミアさんと一緒に帰りましたわ」
「帰った?」
「はい。婚約解消の話し合いのために、侯爵家にお二人で向かったのですわ」
婚約解消の話し合い?
話ってそのことだったの。ジョージに話をしてそのまま侯爵家に? 順調に解消できるということ?
「これで、ジョージと私は結婚できますわ」
なるほど。ジョージはラミアから婚約を解消してほしいと言われて、喜んですぐにでも解消しようと侯爵家に行ったということかしら?
「ふふふふ。フローレン様には感謝いたしますわ。邪魔なラミアをジョージから引き離してくださって。ラミアったら本当にしつこくジョージにまとわりついて邪魔でしたもの」
浮かれている浮気相手にお礼を言われた。
……いや、まとわりついてないよねきっと。婚約者として最低限の振る舞いをしていただけでは? 入学式だって、婚約者がいる場合は婚約者のエスココートで入場するという暗黙のルールがあったから話かけていただけじゃなかったかしらね?
まぁどうでもいいけど。ラミアが幸せになれるなら。
いつもの席に座ると、隣に当然のように殿下が座った。
あれ? まさかこれから毎回隣に座るつもりなの?
授業が終わると、生徒たちが次から次へと話かけてきた。
「黒板やゼリーのことに関しては、アンナにお尋ねください。アンナ、頼めるかしら?」
アンナが資料を片手に頷いた。
「はい、お任せください」
価格表、生産計画、どれくらいの量を市場にいくらで出せるか。大量受注する場合は……などの資料はイーグルたんが作ってくれた。それを元に、アンナが貴族の関係などを考慮しつつ予約を受け付けたりなんやらしてくれる。
えへ。私、貴族の関係全然わかんないんだよね。
「では、また明日。ごきげんよう」
今日はラミアもいないので、薔薇の間に置いてあるバスケットを取りに向かう。
ずっしりと重みのあるバスケットを手に取る。
ラミアに渡すつもりだったものが入りっぱなしなのだ。家でも食べられるようにと持ってきたけれど、お昼にラミアは帰ってしまったからね。
こんなことなら殿下たちに食べてもらえばよかったかな?
生徒会室に寄ろうかどうしようか考えながら中庭を囲む回廊を歩いていると、見知らぬ男から声がかけられた。
誰? 制服を着ていないから生徒ではないわよね? 下級貴族の普段着のような庶民よりは上等だけれども少しくたびれた服装の二〇代の男だ。
殿下の従僕や私の侍女すらも学園には付いてこられないのに、なぜいるんだろう?
あ、もしかして授業が終わった後なら入ってもいいのかな? というか、学園の清掃だとか手入れの人とかが出入りする時間?




