もふ
午前中の授業が終わり、いつものように食堂の薔薇の間へと移動しよとしたところ、ラミアが晴れ晴れとした表情で話かけてきた。
「フローレン様、私、ジョージ様とお話したいことがございますので、先に移動していただけますか?」
「あら? 珍しい。もちろん、ジョージ様はラミアの婚約者ですものね。いってらっしゃい」
何の話だろう。
ラミアは痩せて随分綺麗になった。
浮気相手からジョージを取り返すつもりかな?
いや、いらないか。今までさんざん馬鹿にして、浮気をしていた男なんて。
婚約破棄でもするつもりかな?
いや、でもジョージは侯爵令息でしょ。次男とはいえ。ラミアは子爵令嬢。子爵家から侯爵家に婚約破棄なんてできるわけないわよね?
あ、でも、ラミアが例えばリドルフトと恋仲になれば、問題なく婚約解消できたりするんじゃない?
薔薇の間に入り、リドルフトの元へと直行する。
「ねぇ、リドルフト、ラミアのことですけれど……どう思います?」
あまりにも、ズバリ聞きすぎたか。
「そうですね、小さな領地の子爵令嬢でしかないと思っておりましたが。将来の王妃付きの侍女を目指すという目標も持ち、日々研磨する姿は大変立派だと思います。領地発展のためにと、フローレン様といろいろと尽力なさっている姿もすばらしいですね。まぁ、すべてはフローレン様あってのもの。子爵家の領地に隣接する男爵家の領地運営がうまくいかず領地返還の噂もあります。もしかしたら、子爵家に領地が与えられる可能性もあるのではないかと」
へ? そうなの? 領地が広くなるんだ。
でも、どんな領地なんだろう。男爵家が領地運営できなかったなんてハズレ領地を押し付けられるって話?
ちゃんと調べないと駄目よね。でももし、そうじゃないなら……領地が広がるなんて誉だわ。ラミアが領地の役に立っているのよ。教えてあげたいけれど、噂の段階なのよね。ぬか喜びさせちゃダメだわ。
って、そうじゃない、リドルフト、そうじゃないのよ、私が聞きたかったのは。好きか嫌いかって話だったのに!
でも、今のところは好感触ってことよね? 立派とかすばらしいとか言っていたし。今はこれで良しとします?
「今日はこちらをお持ちいたしました。新作ですわ。殿下からいただいたゴーフル型で作りましたの!」
ワッフルを作りたかったんだけど、ウーブリを焼くためのゴーフル型はワッフルを作るには薄っぺらすぎた。
「ん? 甘くない?」
「ちょっ、殿下ぁ! なんで一番初めに食べるんですかっ! 毒見してからにしてくださいっ!」
殿下が一口かじった、ゴーフル型で作ったモッフルもどき……まぁつまり例によって例のごとく、オートミールを使った食べ物。
オートミールを餅化してそれをゴーフル型で焼いたのだ。ワッフルのように四角いぼこぼこの形をしたモッフルのようなせんべい?
醤油がないので塩味で。塩せんべいもおいしいよね。なんせ、ミネラルたっぷりの藻塩ですよ。うまみもたっぷり。
一口かじったモッフルを殿下が私の口元に運ぶ。
「毒見、してくれる?」
え?
まって、殿下がかじったやつを? 間接キス……だよ、それ?
真っ赤になってうろたえると、
「できないの? まさか、毒が……」
と、殿下が大げさな声を出した。
「ど、毒なんて入ってません。毒見、すればいいんでしょうっ!」
ぱくんと殿下がかじったモッフルにかぶりつく。
あ、そういえば間接キスなんてハンバーガー取られたときにすでに経験してんじゃん。なんだ、殿下は全くあれから成長してないだけか。
と思いながら口に入れたモッフルをもぐもぐとよく噛む。
ダイエットの基本だよね。口に入れたら三〇回は噛む。……無理。三〇回は無理よ。ラミアには偉そうに教えたけど、私は無理だわ。
「毒見、ありがとう」
殿下がにっかりと笑ってモッフルを食べ、ぺろりと舌先で唇を舐めた。
殿下、いくら食いしん坊といえ、口についた塩を舐めとるような行為はみっともないですよ。
「フローレンの味見」
ん?
味見? そんなの屋敷で散々してますけどね?
まぁいいや。
くろっふると言うのも最近はあるんですね。
ワッフルの型で、クロワッサンをつぶして焼いたもの……(*´ω`*)なんだそりゃ。美味しかったけど




