★殿下視点★
殿下視点となります
★★殿下★★
……フローレンの踊っていた時の顔を思い出すと、たまらないな。
はぁー。ずっと見ていたかった。だが、他の男に見せたくはないから終わってよかったのか。
動いているせいか、体温が上がり頬かほんのりピンクに染まったフローレンの顔。
目がキラキラと輝き、口元は本当に楽しそうに笑っていた。
美しいだけじゃなく、あの時には匂い立つような色気も感じた。
あのまま抱きしめて誰もいない場所へと連れ去りたくなった。思わず、心の声が口に出てしまった。
フローレン、好きだ……と。
すぐに私もという言葉が返ってきて、喜びのあまり抱きしめてしまうところだった。ダンスの途中だというのに。
フローレンも、俺のことが好き。フローレンが、俺を! と、思ったのは次の言葉ですぐに否定された。
殿下と踊るのが好きって……そりゃ、俺もフローレンと踊るのも好きだけど、そうじゃないんだ。
俺が好きなのはフローレンだ。踊らなくても、何をしていてもフローレンのことが好きなんだ。
それなのに、ダンスを踊り終えて出てきた言葉が「敵」だとか「ライバル」だとか。
俺は、もしかしてフローレンに恋愛対象として意識してもらってないということなのだろうか。
なぜだ?
俺の何がいけない? ……いや、分かっている。
俺は、フローレンと比べれば、まだまだ未熟なところが多い。
彼女のすばらしさは、美しさだけではない。賢く勤勉で回りが見え優しく……そのうえダンスまでうまい。
今日も、授業中、ラミアがノートを書きとれなかったことにいち早く気が付き声を上げた。
そして、他の者たちもノートを書ききれていないのではないかと心配し、皆のノートも見せるようにと言ったのだ。
なんという気遣いだろう。
それだけではない。
あれは、ラミアのノートを皆のノートと比べられるようにという二重の試みだろう。
ラミアのノートは誰よりもきれいにまとめられていた。先生の話の要点が簡潔にかかれ、そればかりか問題点や疑問点などが簡単にメモしてある。前の日までのノートを見せてもらったが、授業中にメモされたであろう問題点や疑問点の答えとなるものが追加で記入されていた。授業が終わった後に、図書室で調べたり、先生に尋ねたりしたのだろう。
子爵令嬢が公爵令嬢……のちの王妃と言われる、いや、のちの王妃にぜひなってほしい、というか、王妃になるのはフローレン以外考えられないんだが、……とにかくだ。
王妃の侍女は、伯爵家以上の者というのが常識である。特に規定で決められているわけではないが、過去の通例ではそうなることが多かった。
皇太子の婚約者が、お茶会や舞踏会、学園生活を通じて気の合いそうなものを選ぶのだ。そういった場では、爵位の近い者同士が集まる。ゆえに、自然と高位貴族が王妃の侍女に選ばれていくのだ。
もちろん、王妃本人が選んだ侍女以外に、王室が選任した者もつく。護衛ができる者、語学などの知識面で王妃の仕事をサポートできる者、王室のこまごまとした決まり事に精通した者など。
まぁとにかく、子爵令嬢が王妃の侍女になるとなれば、反発も多いだろう。ラミアの優秀さと勤勉さを皆に見せることで、ある者は王妃の侍女にふさわしいと納得し、またある者は自分も認められるように頑張ろうと決意したように見えた。
まぁ、ノートを見て優秀さを理解できず、子爵令嬢が生意気だと反感を持つだけの者もいたようだが。排除リストにリドルフトがメモしただろう。
もしかしたら、愚かな者たちのあぶり出しまでを計算した行動なのかもしれない。




