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俺様を誰だと思っている!からのスライディング土下座

「婚約解消できない理由、結婚しなければならない理由があなたの家にあるのでしょう? それなのに、不仲を見せ、それを広めるような行為をするなんて愚かだとしか言いようがありませんわよ。それを理由に婚約解消……いいえ、婚約破棄されてもよろしいの?」

 ジョージははっと馬鹿にしたように笑った。

「婚約破棄だ? この女が俺を捨てるわけねぇだろ。新しい婚約者が見つかるわけないしな。金が無けりゃ俺だってとっくに捨ててるし」

 ああ、なんて愚かな……。

「お金が理由で婚約したと言うことですのね……。そう、あなたの家は、彼女と婚約することで彼女の家から金銭的支援を受けていると……」

「そうだ。じゃなきゃ、侯爵令息の俺様が、子爵令嬢の豚と婚約なんてするわけないだろう」

 そういうこと。

「相手が侯爵家だから、子爵令嬢のあなたは暴言に耐え、金までむしりとられても従うしかない……ということかしら? そうよね。猿のことが好きで婚約してるわけないわよねぇ。こんなおバカなお猿さん、頼まれても私は絶対に嫌だもの」

 あーいやだいやだ。

 まぁ、誰とも結婚せずに修道院に幽閉されて自由気ままに引きこもり生活送るつもりだから、お猿さんじゃなくても嫌なんだけど。

 でも、こんなDVクズ男と結婚なんて何億円つまれてもごめんこうむる。

「お前、何様だ? 俺は侯爵令息だぞ? ちょっとかわいいからっていい気になるなよ! 子供お茶会で見ない顔だから、どうせ田舎者で王都まで来る金もないような貧乏貴族なんだろうっ! 侯爵令息の俺に逆らってただで済むと思うなよっ!」

 まぁ、何を言い出すのかしらね。お猿さんってば。

「あら? 確か学園在学中は、身分に関係なく過ごせるのではなくて?」

 勝ち誇ったような顔を私に向けた。

「馬鹿はお前だったようだな。そんなの建前に決まってんだろ! 本気にして皇太子殿下に唾でも吐きかけてみろ、学園在学中は不問とされても、卒業後どういう扱いされるのか、想像もできないのか?」

 本当に、おバカさんよね。そう思っているなら、誰か分からない相手に対して好き勝手しなければいいのに。

「あら? そうなの? 教えてくださってありがとう」

 素直にお礼を言っておこう。

「ははっ! 謝ったって許してやらねぇからな! 侯爵家に立てついたんだ。そうだな、俺の言うことを何でも聞くっていうなら親に言わずにいてやってもいいぞ? なんなら愛人にしてやるよ」

 ジョージが私の手をつかもうと手を伸ばしてきた。

 バシッ。

 綴じた扇で手を払いのけると、そのままバサッと美しく扇を広げて口元を覆う。

「私は、お父様にあなたのことはお伝えいたしますわね。学園では身分は関係ないは建前だと知ったうえで、公爵令嬢である私に不埒な行いを要求したこと」

 ジョージがぽかんと間抜け面をした。

 あらやだ。脳みそに情報がまだ行き届いていないのかしら? 

「私、先日までドゥマルク公爵領で過ごしておりましたのよ。ああ、そうですわね。まだ自己紹介もしておりませんでしたわね。私、宰相である、アルフレッド・ドゥマルクが娘フローレンですわ」

 ジョージがパクパクと口を酸欠の魚のように閉じたり開いたりしている。

 顔色もお猿のように真っ赤だったのが、魚のように青くなってきている。器用ですわねぇ。

「それにしても、まさか、学園で身分によって態度を改めないといけないなんて……知りませんでしたわ。めんどくさいのですわねぇ……。はぁ~」

 めんどくさいけど、まぁどうせ私は悪役令嬢。嫌われたって問題ないし。

 適当に我が儘放題過ごせばいいんだったわ。

 パタパタと扇を仰いでため息をつくと、ジョージがなぜか土下座している。

 何してるんだ? と首を傾げたところで鐘が鳴る。

 あら、入学式に遅れてしまうのでは? 

 土下座しているジョージを無視して急ぎ足で講堂へと向かうと、少ししてパタパタと足音が聞こえてきた。

「あ、あのっ!」

 餅令嬢だ。追いかけてきたみたい。

「助けてくださって、ありがとうございます」

 ん? 助けたっていうの? だって、結局エスコートしに来ないじゃない? 

「助けてなんかいないけれど?」

「でも、豚だと罵られているのを……その……かばってくださいました」

「あら? 豚だと言われるのは嫌いでしたの? あなたは豚だと言われるのが好きなのかと思っておりましたわ」

 餅令嬢が驚いた顔をしている。

「だって、豚だという自覚がありながら、罵られていると分かっていながら、それほどまでに立派な豚になっているんですもの。好きでなければ豚で居続けることなんて、私にはとても……真似できませんわ」

 現代日本と違うからね。

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